就職活動ってどこから手をつけるのか、どう進めていけばいいのか分からない。ネットに溢れた情報よりも、同じムサビの先輩のリアルな話が役に立つはず。就活を経て進路を切り拓いた先輩に、これまでの道のりや大変だったこと、やっておけばよかったことなどを聞きました。

<センパイデータ>
名前:A.Cさん
学科:クリエイティブイノベーション学科/2022年入学
内定先:株式会社タイトー/総合職(商品企画コース)


――就活を始めたのはどれくらいの時期でしたか?

A.Cさん:本格的に取り組み始めたのは3年生の終わりの3月くらいです。それより前にキャリアセンターに相談に行ったことはありましたが、授業や展示で忙しく、まだ進路の方向性もぼんやりしているなかで具体的になにから始めたらいいかわからないということもあり、なかなかスイッチが入らなかったんです。2月の展示が終わって、ようやく焦りながら就活を始めました。

――目指す業界や職種はどのように絞っていったのでしょうか。

A.Cさん:最初はクリエイティブイノベーション学科で学んできた「テクノロジー×デザイン」のテクノロジーの部分に惹かれていました。もともと地域コミュニティにも興味があって、コロナ禍があったのでデジタルで地域やコミュニティの魅力を広めていくようなことができないかなと思い、3年生くらいまではITやUI/UXなどの方向でなんとなく考えていたんです。でも「なんだか自分にしっくりこない気がする」「本当にこれをやりたいのかな」という思いもあり、3月に本格的に就活を始めるときに、あらためて自分の好きなことを軸に方向性を絞っていくことにしました。

私は漫画やアニメ、それから「ちいかわ」などのキャラクターも好きなんです。そういうものに関わる仕事ということで、エンタメ業界やキャラクターグッズの企業調べをしているうちに、ゲームセンターのプライズ(景品)をつくっている会社を見つけ、プライズの商品企画という仕事があるということを知りました。美大にいると「商品デザイナー」はよく耳にする職種ですが、企画職についてはあまり考えたことがなかったなと。それまでクリエイティブイノベーション学科の授業でアイデア出しをたくさんやってきていたので、意外とマッチするんじゃないかと思いました。そうして、ようやく方向性が定まったという感じです。

――クリエイティブイノベーション学科では、アイデアを形にしプロジェクトを実践しながら、社会課題を解決する力を養っていくのが特徴かと思います。振り返ってみて印象深かった授業などはありますか?

A.Cさん:これは就活の面接でも話しましたが、「産学プロジェクト実践演習」という授業がありました。学生が全国のさまざまな地域に1カ月ほど滞在し、その地域の課題を解決するプロジェクトを企業や自治体の方と一緒に進めていくというものです。私のチームは東京の根津にある商店街での取り組みで、商店街を盛り上げるためになにができるかを考えました。

根津は下町風情のある街で、レトロな看板やバス停のイスなど、“エモい”風景がたくさんある。それをもっとたくさんの人に知ってもらいたいと考えました。最初の2週間はひたすら街を歩いて探索し、山のように撮った写真を見ながら街にあるものをモチーフに商品企画をして、最後は地元のお祭りでグッズを販売しました。受け入れられやすいかわいいフォルムにしたり、キャラクターをつくったり、思いついたものをどんどん商品にしていきました。お祭りでは地域の外から来た人にもたくさん手に取ってもらえたので、グッズで根津をPRすることができたんじゃないかなと思います。

――まさに商品企画職につながるような、実践的な学びですね。

A.Cさん:クリエイティブイノベーション学科は、とにかくアイデアを出すということ、そしてそのアイデアをちゃんと形にするところまでのプロセスがあり、実践的な学びが多かったです。内定をいただいたタイトーの商品には、ご当地キャラクターのプライズもあります。地域の魅力を自分たちの発想と表現力で形にして伝える体験は、商品企画という仕事に結びついた部分かもしれません。

――就活をするにあたり、情報収集はどのようにしていきましたか?

A.Cさん:最初の段階ではキャリアセンターと姉からです。キャリアセンターでは、私がなんとなくイメージしている企業の名前を出すと、「じゃあこことか、ここもいいかも」といろんな企業を教えていただきました。選択肢が見えてきたおかげで自分のなかで方向性が具体的になっていったと思います。総合大学で就活を経験していた姉には、就活はなにから始めればいいか、スケジュール管理はどうすればいいかなどを相談していました。あと、私は1年浪人していて中学や高校の同級生がすでに社会人1年目だったりするので、情報収集におすすめのアプリを聞いたり、エントリーシートのまとめかたを教えてもらったりしました。周りに聞ける人がいるというのはとてもありがたかったです。

――就活で早めにやっておけばよかったことはありますか?

A.Cさん:もっと前から就活準備ができたのではないか、ということです。忙しくても時間を見つけて企業調べをするとか、もう少し早くキャリアセンターに相談に行くなど、早い時期から動けることがあったかなと思います。

あとは、ポートフォリオでしょうか。私は2次面接で「見せたいものがあれば持ち込み可」というようなときに、簡易的な資料をつくった程度で、ちゃんとしたポートフォリオはつくりませんでした。クリエイティブイノベーション学科ではアイデア出しや実践までのプロセスに力を入れている一方、デザイン系などの学科に比べるとビジュアル面でぐっと目を引く作品が多いわけではありません。ただ、企画職でもポートフォリオが必要な企業はもちろんあり、ポートフォリオがあればエントリーしたかったというところもあったので、しっかり準備してつくっておけば選択の幅が広がったのかなと思います。

――ポートフォリオは早めにやっておけばよかったこととして、本当にみなさんが挙げるポイントです。写真だけでも撮っておくといいですよね。

A.Cさん:そうですね。先生にも写真は撮っておいたほうがいいとずっと言われていたので、私は制作や講評が終わったあと、写真だけは撮って1、2枚ずつ作品用のInstagramに投稿していたんです。結局ポートフォリオはつくらなかったのですが、Instagramにはやってきたことが時系列で並んでいるので、ポートフォリオをまとめるのにも役に立つかもしれません。

――インターンシップには参加しましたか?

A.Cさん:就活のなかでのインターンシップには参加していないのですが、2年生の11月から3年生の6月くらいまで、有給の長期インターンシップに参加しました。これは同じ学科の先輩に紹介してもらい、アルバイトのような感覚で行っていたんです。いろんな企業の案件の資料をPowerPointでつくるというもので、1ヶ月で2、3件のペースでそれぞれ20〜30枚くらいの資料をつくっていました。美大では、IllustratorやPhotoshopに比べるとPowerPointを使う機会は少ないように思います。私はそのインターンシップのおかげでかなりPowerPointが使えるようになって、就活でもそのスキルはアピールポイントになりました。

――就活中に困ったことや悩みなどは誰に相談していましたか?

A.Cさん:私はけっこうChatGPTを使っていました。情報やスケジュールを整理したり、励ましの言葉をもらったりするのはChatGPTに頼っていました。情報の整理は本当に役に立ちましたし、就活は孤独な戦いなので、企業からのメールで落ち込んだりしたときに、ChatGPTに状況を伝えると一緒に落ち込んでくれたりして……。もちろんあくまで補助的な役割ですが、自分には合っていたし、とても効率的に就活を進めることができたと思います。

――就活を進めるなかで、美大生でよかったと思ったことはありますか?

A.Cさん:エントリー企業を探すなかで、デザイナー枠で美大出身が条件のところや、ポートフォリオ必須のところもあったので、デザイナー職を目指すのであれば美大生は有利だと思います。私はインカレのダンスサークルに所属していますが、総合大学でデザインが好きな学生に就活やポートフォリオについて聞かれたこともあります。ポートフォリオについては、やはり美大生は普段から作品をつくっていたり、授業でも作品が生まれていくので、恵まれた環境なんだなと。総合職を受ける場合も、美大生で多少絵が描けることや、特にクリエイティブイノベーション学科ではアイデア出しやグループワークの経験がたくさんあるので、これまで実践してきたことをそのままアピールすることができました。就活という場で話せるようなことをたくさん積み重ねてきた学生生活だったんだなと、あらためて感じましたね。

――タイトーに入社を決めた理由を教えてください。

A.Cさん:キャラクターグッズの企画職でポートフォリオ不要という企業が少なかったので、その条件に当てはまる企業を見つけ次第エントリーしていました。そのなかでもタイトーは、規模が大きい企業であったことや、ゲームセンターの「タイトーステーション」は普段から私も好きでよく遊びに行っていたので、ここでゲームや商品の企画をつくる側にまわりたいと思ったのが理由です。また、提出物のひとつに自分の実力を発揮できる「企画書」があったことも、自分の能力を評価してくださるきっかけになり、決め手のひとつにもなりました。ほかにゲーム業界ではない商品企画の企業も受けましたが、お金を払って商品を買うだけではない、「獲れた」という喜びやなにが出るかわからないワクワク感のあるプライズが、やっぱり私は好きだなって。そんなゲーム性があっても欲しいと思うものをつくれるというのは魅力ですし、とてもやりがいになると思っています。

――今後の目標やってみたいことを教えてください。

A.Cさん:わざわざゲームセンターに足を運び、獲りに来てもらえるようなものをつくりたいというのが仕事での大きな目標です。目先のことでは、残り少ない学生生活をやり残しのないように過ごしたいですね。まず卒業制作があり、サークルでは卒業公演があるので、学生時代の集大成にするために個人でダンスレッスンに通っています。

それから、就職が決まったあとゲームセンターでアルバイトを始めたんです。これまで遊びに行くことはありましたが、内側は知らないので現場を知っておきたいなと。バイト先では先輩方がよくしてれて、新しいコミュニティもできました。あれもこれもで忙しくはありますが、悔いのないように学生生活を送りたいです。