就職活動ってどこから手をつけるのか、どう進めていけばいいのか分からない。ネットに溢れた情報よりも、同じムサビの先輩のリアルな話が役に立つはず。就活を経て進路を切り拓いた先輩に、これまでの道のりや大変だったこと、やっておけばよかったことなどを聞きました。

<センパイデータ>
名前:佐藤 雲母
学科:油絵学科/2020年編入
内定先:株式会社TBSアクト/総合職


——佐藤さんが就活する中で大変だったことは何でしょうか。

佐藤雲母さん(以下、佐藤):面接が大変でした。プレゼンの経験がなく、油絵だと作品の説明も抽象的だったりして、人に伝わるようにロジカルに言葉にするということをあまりしてこなかったので、とても苦労しました。あと、周りに就活をする人が少なかったので、情報共有ができない状況がわりと孤独だなと感じていました。

——面接は練習して慣れていったのでしょうか。

佐藤:キャリアセンターの方に面接の練習をしてもらいました。最初の頃は「ちょっとポエムっぽい」とか指摘されたりして…。やはり面接の場面だと、ポエムではなく理論的に組み立てて話をしないといけない。そういう伝え方に慣れていくのに時間がかかりました。

——キャリアセンターはどれくらいの頻度でどのように利用していましたか?

佐藤:一緒に就活に取り組む仲間がいなかったので、毎週のようにキャリアセンターの予約を取っていました。就活を始める前から、キャリアセンターにいけば何とかしてくれるだろうというイメージがあって、面接の練習をしてもらったり、エントリーシートを添削してもらったり、メールで相談したり、とにかくすごく活用させてもらいました。

——ファイン系の学科だと、作家や教員などの進路を選ぶ学生も多いですが、映像系に進むというのは、早い段階から決めていたのでしょうか。

佐藤:私は油絵学科ですが、美術制作というよりは映像をつくり続けてきたというのと、テレビがとにかく大好きなので、テレビの中の映像の方に関われる会社に行きたいと思っていました。

——周りに就活をする人が少なかったということですが、キャリアセンター以外ではどうやって情報収集をしていましたか?

佐藤:映像系に行きたかったので、企業の情報などは映像系が集まる合同説明会に参加して、そこで色んな会社を知りました。ファイン系の学科は進路が本当に人それぞれなので、あまりそういう話をしない傾向があるかもしれません。みんなで一緒に練習したりポートフォリオをつくったりということもなく、マイペースな感じでしょうか。作品制作も基本的に一人でするので、面接では周囲の人たちとどう関わってやってきたかということを聞かれたりしました。

——就活はどれくらいの時期から始めましたか?

佐藤:私はムサビには2年次編入で、入ったときから就活は絶対にしようと思っていました。本格的に始めたのは3年生になった春くらいからですが、ファイン系ということで就活には不安があったので、編入してすぐにキャリアセンターに行って先輩のポートフォリオを見たり、説明会で話を聞いたりしていました。

——佐藤さんの就活は早いスタートでしたが、それでももう少しこういうことに取り組んでおけばよかったということはありましたか?

佐藤:コロナ禍の編入ということもあり、先輩とのつながりがありませんでしたし、OBOG訪問も全くできませんでした。そういう情報網をつくれていたら、進め方も少し違ったかもしれません。やはり先輩とのつながりは強みになるので、あったほうがいいと思います。

——キャリアセンター以外では、迷ったり悩んだりしたときには誰に相談していましたか?

佐藤:他大学やアルバイト先の友人に相談したり、エントリーシートを見てもらったりして、美大生である自分を客観的に見てくれる人に話をすることが多かったと思います。美大にいると他と違うことや個性があることが当たり前に感じてしまいますが、第三者と接したときに浮いてしまわないように、意識的に美術系ではない方たちに相談していました。

——ポートフォリオはどのようにまとめていきましたか?

佐藤:キャリアセンターで見た先輩たちのものを参考にまとめましたが、内定をいただいた会社では使いませんでしたし、就活を通して結局ほとんど使わなかったんです。ただ、まとめたからこそ、ポートフォリオを使わないという判断ができたと思います。最後まで悩んでいたのですが、自分の志望が美術職ではなく技術職であり、その場ではポートフォリオがアピールにならないなと思ったので、持っていかないという決断をしました。

——なかなか勇気のいる決断だったのではないでしょうか。

佐藤:ポートフォリオなしで自分だけで戦うのはやっぱり心細かったですし、今まで自分がやってきたことを見てもらえないという悲しさもありました。それでもポートフォリオをまとめたことでより自分を理解できたり、自分の就活を客観的に見ることができたので、つくってみてよかったと思います。

——佐藤さんはインターンにも参加したそうですが、インターンはどうでしたか?

佐藤:内定をいただいた会社含め、AD職などテレビ系のところに参加しましたが、インターンはできれば参加した方がいいと思います。実際の現場を見ていると色んな情報が得られて、面接で話せることが変わってきます。私は最終面接で、インターンのときに知った映像編集系の下積みの話などをすることができて、コミュニケーションが弾みました。

——内定先への入社を決めた理由を教えてください。

佐藤:私は油絵学科から技術職を志望しましたが、そうした新しいチャレンジを評価してくれる会社だと感じました。また、やりたかった技術の仕事でテレビに携われるという、自分の希望に合った会社だったというのが理由です。

——就活をしていて美大生でよかったと思うことはありますか?

佐藤:私は中学・高校・大学と全て美術系で、さらに油絵学科なので、その経歴だけでもちょっと興味を持ってもらえたり、自分をアピールする糸口になったりしました。また、抽象的な注文を具体的に形にすることができるというのはファイン系の強みでもあるので、そういう面でも美大生でよかったと思います。

——今後の目標を教えてください。

佐藤:テレビドラマに携わりたいと思っています。油絵学科では色んな人と一緒に制作するということがなかったので緊張していますが、楽しみでもあります。自分が携わった映像を世に出して、たくさんの人に見てもらうことを目標に仕事をしていきたいです。また個人制作も好きなので、それも続けていきたいです。