就職活動ってどこから手をつけるのか、どう進めていけばいいのか分からない。ネットに溢れた情報よりも、同じムサビの先輩のリアルな話が役に立つはず。就活を経て進路を切り拓いた先輩に、これまでの道のりや大変だったこと、やっておけばよかったことなどを聞きました。

<センパイデータ>
名前:青山都希
学科:視覚伝達デザイン学科/2021年入学
内定先:さいたま市教育委員会/美術教員


――視覚伝達デザイン学科ではデザイン系の仕事に就く人が多いなか、教職の道に進もうと決めるまでの経緯について教えてください。

青山都希(以下、青山):実は教職にするか、一般企業に就職するのか、かなり迷っていたんです。就活は早い人であれば2年生の後半あたりから動き出すと思うのですが、私は3年生のあいだずっと、一般企業へ行く道も捨てきれず、並行して対策を進めていました。最終的に教職の道に決めたのは、3年生の12月。かなり遅いとみんなから言われました(笑)。

――一般企業ではなく、教職に振り切ることができた決め手はなんですか?

青山:教育実習などを通じて、しんどいと思うことはあっても「自分はこの職業に向いていないな」と思うことが一度もなかったんですよね。向いていないと思わない、ということは、向いているとも言えるのかなって。

それから一般企業は、不採用になってもその理由はわからないけれど、教員採用試験は点数制の「受験」に近いので、基準が明確で対策もしやすいんです。そうしたさまざまな理由で自分に合った職業かと思い、教職の道に進むことを決めました。

――採用プロセスについて知りたいのですが、そもそも教員採用試験は任意の市区町村で受けることができるものでしょうか?

青山:基本的に好きな市区町村を選べます。ただし同じようなエリア内で併願することは難しいと思います。たとえば関東でいうと、「埼玉県」など県単位で採用していることもあれば、「川崎市」などの市単位の場合も。このあたりは受験日程が重なることが多いんですよね。

――青山さんが、さいたま市を選んだ理由はなんですか?

青山:高校生のときにさいたま市立の高校に通っていたので、実際の教育現場がイメージしやすかったのが理由のひとつです。

もうひとつは、いろいろ調べてみると、さいたま市の教育方針が魅力的に感じたから。東京都のような大きな自治体だからこそできることもあれば、さいたま市のような小さな自治体だからこそできることもある。ホームページを見比べてみるだけでも、自治体によってカラーが全然違うのでおもしろいですよ。

――先ほど「教職は受験に近い」とおっしゃっていましたが、試験対策で一番大変だったことはなんですか?

青山:ただでさえ教職の道に進もうと決めたのが遅かったのに、さいたま市の美術教員は、実技・面接・筆記の3種類の対策をしなければならず、マルチタスクを抱えながらの勉強は本当に骨が折れました。

併願がしづらいため、複数の自治体に合わせて準備をする必要はありませんが、ひとつの自治体だけでやるべきことが多いと感じましたね。

――採用試験に向けて、情報収集はどのように行ったのでしょうか?

青山:ムサビの教職の先生の指導はものすごく手厚いので、まずは先生のところに駆け込むことをおすすめします。たとえばある教授はご厚意で、試験対策用の講座を週に1、2回Zoomで開催してくださいました。

また、たとえば「さいたま市の面接対策が知りたい」と相談すれば「じゃあ〇〇先生のところへ行ったらいいよ」と教えてくださることもありました。やる気がある学生にはしっかり手を貸してくださる環境だと思います。

――就活で迷ったときには、誰に、どういうことを相談していたのでしょうか。

青山:教職に進むことを決めてからは、もう迷うことはなく、とにかく勉強、勉強、勉強!といった感じで、わからないところは教授やキャリアセンターの職員さんのところへ行って、フィードバックをもらうことを繰り返しました。

ただ、どの自治体を選ぶかといったことについては親に相談しましたし、同学年の就活の状況などを知るために、高校の同級生に相談したこともありましたね。視覚デザイン学科にはデザイン系の道に進む人が多いので、孤独を感じることも。だから学外の人と話すことのほうが多かったかもしれません。

――教職の対策から採用までひと通り経験してみて、早めに取り組んでおけばよかったと思うことがあれば教えてください。

青山:少しでも「教職に就きたいな」という気持ちが芽生えたなら、採用試験の勉強は早いに越したことはありません。私は3年生の12月ごろから追い込みで必死に勉強して、それはもう大変だったので。

ですが、わざわざ試験対策をしないまでも、教職の授業をまじめに聞く。それだけでもとても意味があることだと思います。

――教育実習ではどんなところにおもしろさを感じましたか?

青山:私が行ったところはちょっと特殊で、大半の生徒が芸術の選択授業の第1希望に「音楽」を選ぶ学校だったんです。だからその選考から漏れた生徒や、あまり美術が得意でない生徒が多い環境でした。

そのぶん、一人ひとりに向き合うことを心がけました。たとえば、美術が得意じゃないと思っている生徒に、頑張った部分を声がけしたり。まったく問題ないとされていた生徒でも実は迷っていたところがあったり、聞きたかったことを聞けず悩んでいた生徒もいたので、積極的にサポートしました。

座学ばかりではないぶん、作品づくりの合間に一人ひとりに声をかけやすい、というのは美術の授業のおもしろさかもしれませんね。

――ムサビではものづくり中心のライフスタイルだったかと思います。そこから外れることに対しての葛藤はありますか?

青山:いえ、あまりないですね。というのも私は「美大に行ったからものづくりに携わらなければいけない」「視覚伝達デザイン学科に来たからにはデザインをやらなければいけない」といった先入観で進路を絞ってしまうのはもったいないなと、ずっと感じていました。それに、どんな業界に行っても、ササっとチラシをつくれるとか、デザインの知識・経験は絶対に活きるはずなので。

――美大のなかにいて、そうしたフラットな考えを持てるのは素晴らしいですね。ほかに就活・教職対策において、美大生でよかったと思うことはありましたか?

青山:教員採用試験を受ける人のなかには、美大出身者はあまり多くなく、教育学部出身の人が多いんです。だから実技試験で「あ〜、うまくできなかったなあ」と思って周りを見たら、そんなこともなくて。自分にもこれまで努力して積み重ねてきたものが、ちゃんとあったのだと感じる瞬間でした。

そのため実技・面接・筆記の中で、面接・筆記に絞って対策に時間を割けたことは、美大出身だからこそかと思います。

――面接では、美大生ならではのアピールなどされたのですか?

青山:特に美大生というアピールはしませんでしたが、美術のスキルに関して「〇〇はできますか?」と聞かれたときに、堂々と「できます!」と答えられたことはよかったです。そのあたりは、教育学部の学生よりも説得力があったのではないでしょうか。

――どんな先生でありたいかなど、目標はありますか。

青山:私がきっかけで美術を嫌いになってほしくない。それだけは強く思います。私の場合、学生時代に苦手だった先生の科目って、いまでも苦手だったりするんですよね。私自身がより魅力的にならなきゃとか、おもしろくならなきゃとかそういうことではなく、授業の合間の声かけやスタンスは生徒に伝わるはずなので、一人ひとりとしっかり向き合える先生でありたいです。