学生が就職以外の進路を選択する際に知っておきたい予備知識を、ゲスト講師に“7つの質問”を投げかけ学ぶ課外講座。ゲスト講師はイラストレーターのKIMUKIMU(キムキム)さんです。後編では時間の使い方や苦労していること、またどのように先を見据えて作家活動をしているのかなどをお聞きしました。

●ゲスト講師 KIMUKIMUさん(イラストレーター)
●聞き手 酒井博基(株式会社ディーランド代表取締役)

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質問4 時間の使い方はどのようにしていますか?

(酒井)続いての質問は「時間の使い方」です。作家やフリーランスは時間の使い方をコントロールできますが、具体的にどうしていますか?

(KIMUKIMU)作家やフリーランスは休みを取りたければ取れますし、自由ではあるけれど、グダグダすることもできるので怖いですね。僕はメリハリをつけて、“やるときはやる”タイプです。数日間集中的に作業して、そのあとは休むというようにしています。制作は平日も休日も行いますが、事務的な仕事をするのは平日だけにしています。そうしないと休みの日でも「あれをやらないと」という頭になってしまうので。また、制作は家の中で行いますが、メールの処理や事務仕事をするときはカフェで作業したりします。場所を変えるとはかどる気がするんです。

(酒井)休日は事務仕事をしないと決めているということですが、反対に休日にやるようにしていることはありますか?

(KIMUKIMU)一応世間に合わせて土日を休日にしていますが、基本的に思ったままに過ごしています。友だちの展示を見に行ったり、お世話になったギャラリーに足を運んだり。それは休日に限りませんが、時間の使い方として大事にしていることかもしれません。

(酒井)展示を見に行ったりすることが、制作のアイデアを得るインプットの機会になっているのでしょうか。

(KIMUKIMU)そうですね。作家の友だちも多いので、展示を見に行って話をしたり、いいギャラリーを見つけたり、グッズもほかの人のものを見ると勉強になることが多いです。

(酒井)自分以外の人の展示で思わず注目してしまうところはありますか?

(KIMUKIMU)作品やコンセプトはもちろんですが、空間をどのように使っているかに興味があります。鑑賞者はどういう動線で見るのか、その空間をどう楽しめるか、というところを見ているかもしれません。

(酒井)パッケージもそうですし、世界観のつくり方がKIMUKIMUさんのこだわりのポイントなんですね。その世界に入り込んで浸ることができると、気分も上がりますし、作品やグッズがほしいという気持ちにもなると思います。

(KIMUKIMU)展示もポップアップショップも、みなさんわざわざ時間をかけて来てくださるので、絶対に楽しんでいってほしいんです。その空間ごと楽しんで、ゆっくりしていってほしいという気持ちでつくっています。

(酒井)今日も、KIMUKIMUさん自ら受講生にプレゼントのステッカーを用意して手渡ししていただきました。KIMUKIMUさんは学生時代からずっと“カドのない作品”をつくっていますが、そういった心配りも作品のコンセプトに通じるのかなと感じました。

(KIMUKIMU)カドのない作品は空デの頃からつくっていて、銅版画でもまず板の角を削ってから描いています。言葉や態度の面でもカドをなくしていきたいという思いがあり、まずは目に見える作品からそういうことに取り組んでいます。

質問5 うまくいっていること、苦労していることはなんですか?

(酒井)うまくいっていることや、反対に苦労していることを教えてください。

(KIMUKIMU)今こうやって活動できていることが、一番大きな「うまくいっていること」だと思います。今年は1月から5月まで、月に1回いろいろな案件でポップアップショップや展示をやらせていただいています。それは声をかけてくださる方がいるということで、嬉しいことです。

苦労していることはたくさんありますが、たとえばメールの返信がすごく苦手なんです。仕事の依頼メールをいただくと、内容や条件を確認して返信しますが、たくさんの依頼が同じ時期にくることもあり、その中からどれを引き受けるか選ぶことにとても苦労します。返信の仕方も、最初の頃は毎回ネットで文章の例を検索して返信していました。大学で仕事のメールや社会のルールのようなことを学べるような授業があればよかったと思うほどです。

ほかには、グッズの梱包や値段シールを印刷して貼ったりする作業や、ポップアップショップの期間中、店頭に立って接客するなど、作品をつくる以外の仕事もいろいろあります。僕はそういうことも好きなのですが、苦手な人は大変かもしれません。

(酒井)作家としての活動がうまくいけばいくほど、メールのやりとりやグッズの梱包作業などの負担も大きくなっていくと思います。もっと制作に集中したいという気持ちにはなりませんか?

(KIMUKIMU)そう思うことはあります。グッズの梱包などは友だちや姉に頼って一緒に作業してもらったりもしていますが、メールなどの依頼案件について調べてくれる人がいたらいいのにと。ただ、今のところは自分で対応できているので、がんばってみようと思っています。

質問6 10年後、20年後など、先のことを考えることはありますか?

(酒井)6つ目の質問です。作家活動をするうえで将来についてどれくらいのスパンで考えているのかを聞いてみたいのですが、KIMUKIMUさんは先を見据えて逆算し、今の活動を考えたりしているのでしょうか?

(KIMUKIMU)僕の場合はあまり先のことではなく、もう少し目の前の、手の届く範囲で叶えられる目標のことを考えています。なので、たとえば35歳になってもおそらく活動は続けていると思いますが、今やっているようなイラストなどの仕事ではないかもしれないし、どういうことをしているかは……。自分はイラストレーターでもあるし、アーティストと捉えられることもあって、求められたときに自分のなかのその引き出しを開けるような感覚で活動しています。今はその引き出しをもう少し増やしたいと思っていて、陶芸を始めたりもしています。最近の目標はキャラクターをつくること。キャラクターを極めてぬいぐるみをつくりたいと思っています。

(酒井)キャリアのプランを立てるというよりも、現実的に手の届く範囲の目標を立てて、一つずつ丁寧にクリアするというのを大事にしているということですね。

(KIMUKIMU)表現の手段を複数持っている作家さんをよく見かけますが、それはすごくいいなと思っているんです。自分の軸がしっかりあるうえで表現の幅が広がっている。僕にも“KIMUKIMUでありカドのない作品をつくる”という揺るがない軸があるので、そこから派生して版画や陶芸やイラストの制作など、いろいろな活動ができるのかなと思います。

質問7 作家として成功するための条件はなんだと思いますか?

(酒井)最後の質問です。KIMUKIMUさんが感じている「こういう人が成功するんじゃないか」というのはありますか?

(KIMUKIMU)やはり軸を持つということでしょうか。自分の色や思想を持っている人。はっきりと「自分はこういう表現をします」「〇〇屋さんです」と言えるものがある、相手にわかりやすく伝えることができる作家さんは強いなと思っています。

(酒井)確かに、SNSなどでそういう軸がしっかり見えていると、仕事を依頼する側も声をかけやすいかもしれません。それこそ作品そのものだけではなく、パッケージや作品の見せ方、発信の仕方など、そのすべてを見て魅了されるのだと思います。作家活動は作品を核として、その周りにあるすべてのことが大事なのだと感じました。今日はありがとうございました。


<講師プロフィール>
KIMUKIMU(キムキム)/イラストレーター

1998年静岡県浜松市出身。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科に入学後、3年次に油絵学科版画専攻(現:グラフィックアーツ専攻)に転科。武蔵野美術大学大学院美術専攻版画コースを修了後は、イラストレーターとして活動中。在学中からカドのない作品を制作し続けており、銅版画作品やドローイングの個展を度々開催、イラストレーショングッズを全国の百貨店,商業施設での期間限定ショップなどで販売している。最近では企業やアーティストとのコラボレーション、壁画制作など幅広く携わっている。
Instagram:@kimukimu324