＜卒業生データ＞
しろいおもち
2009年 視覚伝達デザイン学科卒
サンエックス株式会社
デザイン室
ディレクター
――進学先をムサビに決めた理由を教えてください。
しろいおもちさん（以下、しろいおもち）：いろいろな美大があるなかで、ムサビの学生はおもしろい、個性的な人が多いという話を聞き、そこに惹かれて受験を決めました。在学中はイラストレーションを中心にデザインや映像も学びながら、地域のワークショップなどにも積極的に参加していました。
――特に印象に残っている思い出はありますか？
しろいおもち：やっぱり芸術祭が一番思い出深いですね。仲間と一緒にオリジナルキャラクターのフィギュアをつくり、カプセルトイとして販売したのがすごく楽しかったです。
――現在はサンエックス株式会社に勤務されていますが、就活はいつから始められたのでしょうか。
しろいおもち：大学２年生の後半くらいから、よくキャリアセンターに求人票を見に行っていました。実際に就活が始まってからは、面接の前に疑問や不安に感じていることなどをキャリアセンターの方に聞いてもらい、とても助かったのを覚えています。
――早い段階から就活を意識されていたんですね。最終的にサンエックスへの入社を決めたのはどういった理由があったのでしょうか。
しろいおもち：もともと、イラストやマンガ、アニメーションがすごく好きで、特に小さな生き物のキャラクターが好きなんです。なので、キャラクター制作にまつわる会社を中心に受けていました。そのなかでサンエックスを選んだのは、自分が一番やりたいことに合っているなと感じたからです。それから、サンエックスのwebサイトの会社案内ページを見て、楽しそうな雰囲気だったことも決め手のひとつです。実は、性格的に私は会社勤めには向かないかも……と不安な気持ちもあったのですが、この会社なら自分も頑張れるかなと思ったんですよね。
©San-X Co., Ltd. / NIPPON COLUMBIA CO., LTD.
――これまでに携わったなかで、印象に残っているプロジェクトはありますか？
しろいおもち：サンエックスは文房具やシールなどの商品開発から、バスのラッピングやマンガ制作まで多彩な業務があります。その中でも、映画『すみっコぐらし』の仕事が一番印象に残っていますね。私はキャラクターの世界観を確認する担当を任され、映画のなかですみっコぐらしのキャラクターが性格と合わない動きをしていないかなどの世界観を確認するほか、パンフレットなどの関連書籍の校正も行いました。制作会社さんとたくさん話をしてひとつの映画作品をつくりあげるのはすごく楽しかったですし、貴重な経験でした。
©2021 日本すみっコぐらし協会映画部
――非常に大変そうなお仕事ですが、最も苦労したのはどういうところですか？
しろいおもち：脚本のチェックでしょうか。脚本の段階で、世界観を守りつつストーリーの整合性をとらなければいけないところが一番大変でした。たとえば、あるキャラクターがしゃべりすぎているので、セリフを減らしてくださいと脚本家の方にお願いしたり。関わってる人間全員でキャラクターの世界観を守りながら映画をつくっている感覚でした。原作側からすると、とてもありがたいことでした。
――お仕事をするうえで心がけていることや大切にしていることを教えてください。
しろいおもち：仕事を進めるなかではさまざまな打ち合わせがあるのですが、楽しいアイデアをみんなで出し合う場にしたいので、打ち合わせ自体が楽しくなるように心がけています。打ち合わせが楽しいと、完成したものにもすごく反映されるんですよね。
――ムサビの経験がお仕事に活かされることはありますか？
しろいおもち：私はかなり小心者なので、高校生のときからプレゼンがすごく苦手だったんです。でも、ムサビに通うようになってから毎週のようにプレゼンの授業があるんですよ。毎回緊張しながら重い気持ちで臨んでいたのですが、それを繰り返すことでかなり鍛えられました。最初はなかなかうまく話せなかったのですが、少しずつ自分の意見を順序立てて言えるようになったと思います。
社会人になると、家族や友人以外に自分の意見を正確に伝えなければいけない場面がとても多い。プレゼンの方法や言葉選びをムサビ時代に学んでおいてよかったと感じています。
――ムサビ、あるいは美大出身でよかったと思うことはありますか？
しろいおもち：ムサビはとにかく個性的な人が多く、その人たちと広く関われたことです。発想や考え方、何気ない会話もおもしろい人がたくさんいたので、いまのキャラクター制作の仕事に少なからず役立っていますね。
――学生時代を振り返って、やっておけばよかったなと思うことがあれば教えてください。
しろいおもち：いまの仕事は本当にさまざまなことを任されるのですが、好きなものが多いほど引き出しが多くなると思うので、学生時代にもっといろんなことを好きになっていればよかったなと思います。広くアンテナを張って趣味も増やせていれば、もっといいデザインがつくれていたかもしれません。
――最後に、今後の目標やチャレンジしてみたいことを教えてください。
しろいおもち：街なかで自分が携わっているキャラクターのグッズを身につけている人を見ると、すごくやりがいを感じます。これからも、キャラクターを通じて生活が楽しくなるような仕事を続けていきたいです。もともとは新しいキャラクターを生み出したいと思っていたのですが、キャリアを重ねるにつれてその気持ちが少しずつ変化していき、いまは既存のキャラクターを育てていきたいという思いも持っています。生み出すことと、育てること。その両方に携わっていけたら、とてもうれしいですね。
