<卒業生データ>
牛丸裕貴
2021年 デザイン情報学科卒

株式会社カプコン
CS第二開発統括 開発三部 第二ゲームグラフィック室


――現在の業務内容について教えてください。

牛丸裕貴さん(以下、牛丸):ゲーム制作のなかでモーションを担当しています。モーションとは、ゲーム内に登場するキャラクターの動きをつくる仕事。いま現在は、プレイヤーが操作しないキャラクターのモーションを実装する業務にあたっています。

――ムサビ時代、どれくらいの時期に就職活動を始めたのでしょうか。

牛丸:3年生になってから意識しはじめて、キャリアセンター主催の学内の企業説明会には参加していました。本格的に始めたのは3年生の終わりごろです。ただ、そのころちょうど新型コロナウイルスの影響で登校できなくなってしまったので、キャリアセンターを利用する機会は少なくなってしまいましたね。

――ゲーム業界に興味を持ったのはいつごろからですか?

牛丸:正直、就活をはじめるときは、なにをやりたいか決まっていませんでした。逆に「なんでもやりたい」と思っていて、学内の企業説明会や卒業生の話を聞く授業などに参加するうちに、ゲーム業界に興味を持ちました。

ゲーム制作の現場にはプログラマー、プランナー、デザイナー、サウンドクリエイターなどさまざまな職種の人がいて、その人たちが同じ目標に向かってひとつのものをつくるという点が魅力的でした。いろんな人がいる環境がムサビに近いなと思ったことも、興味を持ったきっかけになりましたね。

――カプコンへの入社を決めた理由を教えてください。

牛丸:ゲーム業界の複数の会社で面接を受けましたが、特にカプコンの方は、僕の話に興味を持って聞いてくれていると感じたんです。それが印象的で、進路決定をするうえでの大きな決め手になりました。

また、研修が充実していることも理由のひとつでした。入社1年目は技術研修を受けて、その後実務に入ります。実際に業務をはじめる前にしっかりと学べる環境が整っていたので、安心して専門知識や技術を得ることができました。

――印象に残っている業務やプロジェクトを教えてください。

牛丸:2023年にリリースしたゲーム『EXOPRIMAL(エグゾプライマル)』で、ネオ・トリケラトプスという敵のボスキャラクターのモーション制作をメインで担当したことです。制作の初期は企画書とモデルしかない状況で、細かいところは決まっていませんでした。そんな段階から参加して、キャラクターをよりカッコよく魅力的にするにはどうすればいいか、ゲーム体験をよりおもしろくするためにはどうすればいいかなどを、プログラマーやエフェクト、プランナーなどのメンバーと日々話し合いながら、試行錯誤してつくりあげていきました。ゲーム制作のおもしろさが凝縮されたような体験だったと思います。

牛丸さんが制作に携わり、2023年にリリースされたゲーム『EXOPRIMAL(エグゾプライマル)』のメインビジュアル
©CAPCOM
奥に描かれているのは、牛丸さんがモーション制作をメインで担当した、ネオ・トリケラトプスという敵のボスキャラクター
©CAPCOM

――牛丸さんは入社1年目からそういったプロジェクトに関わっていたんですか。

牛丸:特定のキャラクターを担当したのは2年目に入ってからです。最初はモーションの調整やブラッシュアップを担当していました。その後、適切な経験を積んでから、上司のすすめで特定のキャラクターの制作に挑戦しました。そのときも、先輩と二人三脚でチームと密接に連携しつつ、細かい確認や指示を仰ぎながら進めましたね。

――自分のつくったキャラクターが実際にリリースされたとき、どんな気持ちでしたか。

牛丸:最初は「本当にリリースされてるんだ!」という感じでした。正直、キャラクターの制作自体が難航した時期もあったんです。だから、本当にリリースされるのか不安でいっぱいで……。ちゃんとリリースされてみなさんに遊んでもらえたときの安心感は大きかったですね。

プレイヤーのみなさんからは「めっちゃむずい」という反応を多くもらいました(笑)。簡単にクリアできるよりも、何度も負けを繰り返しているうちに活路を見出してなんとか勝つ、という成功体験がゲームの楽しさにつながると思うので、その反応はゲーム好きとしてもうれしかったですね。とくにアクションゲームでは、モーションがゲームの難易度やプレイヤーの体験に直結するので、そうした部分に携われてよかったです。

――仕事をするうえで心がけていることはありますか。

牛丸:個人の満足も大切ですが、カプコンとして世に出すべきクオリティの作品を制作することが重要です。会社に所属するデザイナーである以上、会社のクオリティラインを守ることを心がけています。カプコンのスタッフの「いいものをつくりあげる」という意識は強く、クオリティをもっと高めていこうという共通認識があるように感じます。

――ムサビでの経験は仕事にどう活かされていますか。

牛丸:つくるものに対して常にクオリティを追求する姿勢は、間違いなくムサビで身についたものです。在学中も「自分が納得するまでとことんやる」というスタイルでした。いまは個人として納得し、さらに会社にも納得してもらえるようにクオリティを追求しています。そういう意識が自然と芽生えたのは、ムサビで課題をこなしたり、作品制作を積み重ねてきたりしたからではないでしょうか。

すごく印象に残っているのは、卒制委員として展示会場の図面をつくったこと。卒業制作の企画書を全員分見ましたが、同じ学科なのにみんなバラバラだったんですよね。そんなみんなと一緒にいろんなものをつくった体験は、企業所属のデザイナーにとって必要な「一緒につくる力」を養えた機会だったと思います。

――ムサビ出身でよかったと思う点はありますか。

牛丸:デザイン情報学科はデザインを中心としながらも幅広い分野を学べるので、その時々で興味のあることをとりあえずやってみようと、片っ端から挑戦しました。

やりたいことを詰めまくったので、毎日のように締切に追われていて、期末の課題にも四苦八苦していましたね。退校時間まで作業していました。でも、それが自分だけじゃないというのも大きかったです。僕と同じような人がたくさんいて、「課題終わらないな」と文句を言いながら(笑)、一緒にやっているのは本当に楽しい時間でした。

ムサビに入るために努力したことや、ムサビという大学自体をリスペクトして通ったという経験が、いまの自信や自負につながっていると感じます。あのとき頑張れたからいま頑張れる、と思うことは多いですね。

ムサビ時代の作品をまとめたもの。アニメーション、WEBデザイン、UIデザイン、ペン画、イラスト、電子工作、3DCG映像など、ジャンルを問わずさまざまな作品をつくっていた

――ムサビを受験することを迷っている高校生にメッセージをお願いします。

牛丸:大学選びは大事な岐路になるので、悩むことも多いと思います。でも、悩むこと自体が大切なこと。まずは調べたり、実際に足を運んだりして、ムサビを目で見て感じて、ここで自分がやりたいことができそうかどうか考えてみるのがいいと思います。

僕もそうだったように、まだやりたいことが明確でない人も多いかと思います。授業や学内行事、制作などをイメージすることを通して、そこにいる自分を想像してみてください。そのなかでやりたいことに気づくこともあります。逆に、やりたいことがいくつあっても大丈夫。率直におもしろそうと思うことにたくさん触れてみてほしいです。