取材:2020年8月

長谷川 葉平(はせがわ・ようへい)
2019年彫刻学科卒業。 造形美術コースを持つ高校で彫刻に出会い、武蔵美に進学。木の持つ強さや匂いに心惹かれ、大型の木彫作品を発表し続けている。株式会社インテリア・エースでは技術とパワー、探求心を併せ持った若手として現場の大きな期待を寄せられている。


平日は湾岸のファクトリーへ
休日は山のアトリエへ

舞台やライブの大道具、展示会や店舗のディスプレイなどの製作を手掛ける、株式会社インテリア・エース。同社期待のルーキー・長谷川さんの毎日は、実にエネルギッシュだ。

「仕事で木工をやり、趣味…というかライフワークとして、彫刻をやる。毎日なにかしらつくって、身体を動かす。そういう暮らしをずっと続けていますが、まったく飽きませんね。とても楽しいです」。

その言葉を裏付けるように、日焼けした二の腕には逞しい筋肉が盛り上がる。彼は最初から、仕事と創作活動を両立するつもりで就職し、会社もまた、その意思を尊重しているのだ。

彫刻家としての長谷川さんは、チェーンソーや鑿(のみ)なども用いる大型の木彫を制作している。在学中はともかく、社会人になって創作活動を続けるには中々ハードルが高い分野だろう。

そこで長谷川さんは、武蔵美卒業前に、彫刻学科の仲間たちと共同で奥多摩に広いアトリエを借りた。一人暮らしの都心の住まいにはとうてい置けない、長さ数mの丸太も扱え、火花飛び散る金工もできる。誰にも遠慮せず創作に打ち込める場所と、職場のあるベイエリアを行き来しながらのものづくり三昧の生活を、長谷川さんは心から楽しんでいるようだ。

(写真左)武蔵美の仲間とつくったアトリエ。大型作品ものびのびと制作できる、長谷川さんのアーティストとしての拠点だ。
(写真右)作業の早さにも定評のある長谷川さん。すぐに作業にかかれるのも、さまざまな木工作品をつくってきた日々がベースにあるからだ。

方向性が真逆のものづくりが
どちらにもよい刺激を与えて

すでにベテランの風格を漂わせてはいるが、長谷川さんはまだ入社間もない新人だ。現在は先輩について、木工による大道具の製作と現場設営を学んでいる。

「工具は武蔵美時代から扱い慣れていますし、基本的な構造や素材の知識もありますから、頼まれた作業をこなすのは難しくはない。おっ! と思わされたのは、“効率を考えたものづくり”と“作品制作”との違いですね」。

インテリア・エースが手掛けるのは、演劇やライブの背景にしろ展示ブースにしろ、設計・製作し、設営・撤収するまでの総合業務だ。当然、スポットライトを浴びたときの本物らしさを追求しつつ、納期や製作の手間、コスト、設営や撤収の効率まで考えてつくらなくてはならない。作家が己の満足ゆくまで時間と資金をかけて制作するアート作品とは、まったく逆のクリエイティブなのだ。

「コスト計算などには正直てこずっていますが、両方やってみて、どちらもおもしろいなと僕は思いました。方向性の違うものづくりは、双方の表現の幅を広げてくれますし、技術的な引き出しも増える。そうすると、頭の中にあるカタチをスムーズにアウトプットできるようになるんです」。そう語る手元で繰られるノートには、入社以来関わってきた案件のデータや、現場で学んだことがびっしりと書き込まれている。その熱意と詳細さにベテラン職人たちも感心する“長谷川メモ”だ。

「向上心を持って向き合えば、長いキャリアをもった人たちが、惜しむことなくノウハウを教えてくれる。経験値を稼ぎながらお金をもらって、好きな彫刻に注ぎ込めるなんて最高ですよ」。

仕事と創作、海辺と山奥。両輪駆動で往復しながら、長谷川さんはものづくり人生を驀進中だ。

インテリア・エースの手掛ける舞台や展示会の大道具の数々。設計・製作から設営監督まで、これから長谷川さんが挑むべき業務領域は広い。

上司が語るムサビの人間力

自らの腕と頭脳で技を習得していく意欲

西田 宗納(写真上)
工場長

山田 タカヲ(写真下)
設計・施工・製作 ディレクター

ベテランが多い当社製作部が迎えた、久々の大型新人。基本的な道具の扱い方などは堂に入ったもので、まさに即戦力級のスキルの持ち主です。特にいいと思うのは、はじめての課題であってもすぐにトライできるバイタリティ。その上で、失敗や新たな学びを、きちんと記録して次につなげる姿勢です。
手を動かし、頭に刻み、身につける。現場でのこの繰り返しが、彼をさらに成長させてくれるでしょう。数字はちょっと苦手そうですが、前向きにがんばってほしいです。

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