取材:2019年6月

小林 眞菜美(こばやし・まなみ)
2017年工芸工業デザイン学科卒業。
両親の希望で図画工作に力を入れている幼稚園に入ったのが、ものづくりに関わるきっかけ。大学では木・金属・磁器など材質について学びを深めインターンシップを経てカリモク皆栄に入社。マーケティングをふまえた商品提案に取り組んでいる。


仕事の根幹に息づいている
武蔵美で学んだ“裏づけ”の追求

大学3年生の夏、インターンシップにやってきた小林さんの一言は、社内をちょっとざわめかせたという。

「確か“デザインそんなに好きじゃないんです”というようなことをポロッと……美大生がこういう会社のインターンシップに参加して、何を言ってるのやらですよね。指導してくれた方も驚かれたそうです。でも“せっかく来たんだから、なんとか期間中ものづくりを楽しませよう”と、デザイン課題だけでなく工場で作業体験をさせていただいたり。おかげで帰る頃には、面白かった、いい会社だなぁ! って」。

本人も苦笑いの逸話を引っさげて、小林さんが入社したのはカリモク皆栄株式会社。セレクトショップやカフェの定番ソファで人気のカリモク60シリーズをはじめ、高い木材加工技術と人間工学に基づいて数多くの名品家具を生み出してきた業界大手・カリモクグループの企画開発とマネジメントを担う会社だ。

小林さんはここで今、市場調査からデザイン、図面作成、見積、製造する現場のサポートなど幅広い業務に携わっている。

「所属はマーケティングセンター。お客様のニーズやトレンドを把握し、そのデータをもとに、既存製品のカラーや素材変更の提案をしたり、試作品をつくったり。インダストリアルデザインを専攻していた武蔵美時代、つくるならユーザーの求めるものをと、常にデザインの裏づけを求められていた経験がとても役立つ部署ですね」。

もともと木や金属などの素材が好きで工芸工業デザイン学科を選んだ自分に、製品の最初から最後まで関わることのできるこの会社は合っていたのでは、と小林さんは振り返る。

製造の現場と直結した同社では、自分のアイデアを確かめるため、自ら試作することも。ペーパー素材でいすの座面を編みながら「改めてものづくりの愉しさを実感しました」と小林さん。

メーカーを超えていくために
求められた、異なる視点

そんな小林さんのはじめての作品が、本社に併設された広大なショールームに展示されていた。すっきりしたアームが印象的な布張りソファのリモデルにあたって、新色のバリエーションを考えたのだという。

小林さんが提案したのは、ミモザ色のクロスだ。単純なイエローではなく、こっくりと深みがあるけれど、マスタードほど渋すぎない。明るいリビングに置けば爽やかに、落ち着いた空間にあればパッと華やいだアクセントになりそうな、絶妙な色だ。

「カリモク=良質な家具メーカーという本質はぶれません。でも今後はもっと広く、カリモク製品のある空間のデザインや、選んでくださるお客様のライフスタイルプロデュースなど、総合的に暮らしに関われる企業をめざしていくのだと思います。私みたいなちょっと変わった者を採用してくれたのも、人と違う視点や感性がほしかったからなのでは。私としてもやっぱり、いつかはカリモクの新たな定番になるような製品を生み出したいという野心はあります。だからこそいろんな業務に関わって、どんどん吸収していきたい」と小林さん。

見て、調べて、考えて、試して。そうやってつくりだした製品が世に出ていく経験を重ね、小林さんは改めて、ものづくりの奥深い愉しさをかみしめている。

自社製品を最高に魅力的に見せる空間。そしてそこにいる人を心地よくする空間。
多角的な視点で考えられたコーディネート提案にも挑戦中。

上司が語るムサビの人間力

知識と表現力が豊かで
意図を伝えられる

藤森 孝彦
マーケティングセンター
課長

インダストリアルデザインを学んできただけあって、さまざまな材質の知識と、それをどう用いるかという発想の豊かさはさすが。さらに優れているのは、自分の意図を他者に伝える力です。お客様、上長、製造スタッフ。どんな相手とも上手にコミュニケーションをとって、みんなの意見をまとめあげていく姿をみると、ディレクターやキュレーターの資質もありそう。いずれは当社がめざす総合的な提案ができる人材にと、成長を期待しています。

企業リンク
> カリモク皆栄株式会社