取材:2017年6月
小倉 麻里枝(おぐら・まりえ)
2011年、視覚伝達デザイン学科卒業。
武蔵美時代に玩具づくりや、子どもたちを招いての夏休みワークショップを経験。
夢中であそぶ子どもたちの姿をきっかけに、玩具業界を志すことに。
入社後は同社の運営する室内あそび場『キドキド』でプレイリーダーを4年間務め、2016年から現職に異動。
優しくてちょっと難しい
あそびを刺激に、子どもは育つ
ボーネは子ども。ルンドは森。小倉さんが働く株式会社ボーネルンドは、デンマーク語で「子どもの森」という意味を持っている。同社は1977年に北欧のすぐれた大型遊具・教育遊具の輸入商社として創業。子どもにとって、“あそぶこと=生きること”というモットーを掲げ、近年は室内あそび場の運営や公園・遊戯施設のプロデュースなども行う“あそびのプロフェッショナル”として、仕事の幅を広げている。
小倉さんは、入社から4年間、同社の室内あそび場『キドキド』で、子どもたちと直接ふれあうプレイリーダーとして活躍。昨年の異動で、遊戯施設の企画・デザインに携わる、デザイナーとなった。
彼女が手がけた案件のひとつに、岡山の市立図書館に併設された屋外あそび場がある。緑の山並みを借景に、肌触りの優しい国産材を敷いたテラスには、家には置けない大型の木製遊具を多数配置した。
「ボーネルンドのあそび道具は、優しくて、でもちょっとだけ難しい。この遊具はこうやって遊ぶものという決まりがなく、どうすればもっと楽しくなるかなと子どもたちが自ら考えてチャレンジしたくなる、そういう工夫がたくさんしかけてあるんです」と小倉さん。
駆け回り、よじのぼり、もぐりこみ、おしゃべりする。子どもたちが楽しく過ごせる“場”が誕生したことで、子育てファミリーの来館が増え、交流のきっかけとなる効果も期待されている。
この国がやっと気づいた
あそび場の大切さ
こうしたボーネルンド・プロデュースのあそび場は、近年、公共施設だけでなく、より多彩な業態の中へ進出している。たとえば、集客の目玉として商業施設の中に。子育てファミリーの満足度を高めるため、マンションの共用部へ。なぜ造りたいのかという目的だけでなく、広さや予算、クライアントの志向も異なる案件に、ボーネルンド流の提案を盛り込みながら、小倉さんは考える。
「少子化問題や子育ての難しさ。今の日本は子どもたちにとって、とても厳しい状況にありますよね。のびのびあそべる場所がない。保護者を助ける施策がない。そういう問題に、ボーネルンドが光をあててくれるのではないか。そんな期待の高まりを感じますし、実際に子どもが自発的にのびのびと遊ぶ機会を増やすことで、この国の子どもをとりまく未来が変わる可能性だってある。私はそう思っています」。
小倉さんは武蔵美時代、近隣の小学生を招いて夏休みワークショップを開いたことがある。オリジナルの劇に瞳を輝かせた子、まだ帰りたくないと泣き出した子。どんな子どもにも、心と身体を動かし、成長を促す“あそび”が必要なのだ。その気づきに導かれるように、小倉さんは今日も、あそびの最前線に立っている。
上司が語るムサビの人間力
言葉で高まる説得力
林 耕介
企画部 部長
小倉さんの言葉づかい・言葉選びにはよく感心させられます。美大生ですから、ニーズを形にすることに長けているのは当然ですが、さらに穏やかな言葉で「このカタチ、この提案には、こんな意味や価値があるんです」と裏付けてくれる。そういう繊細なセンスを備えた人です。
今は営業経由の案件が多いのですが、いずれは自らヒアリングし、デザインし、提案する、総合力を持った戦力にと大いに期待しています。
企業リンク
> 株式会社 ボーネルンド