取材:2016年5月

三枝 詩歩(さえぐさ・しほ)
2014年、視覚伝達デザイン学科卒業。
入社後はジグソーパズル事業部で同社初となる人気アニメのモザイクアートジグソーパズルや小ロット生産の特性を生かした新規事業『パズル紀行』の立ち上げに関わる。
武蔵美で学んだ色彩感覚やデザインセンスを生かし店頭演出などにも積極的に取り組んでいる。


課題でつくった積み木がよみがえらせた
幼い頃の楽しい思い出

パズル、野球盤、シルバニアファミリー。株式会社エポック社のカタログを眺めていると「あっ! これ持ってた!」と懐かしく思い出すものが、きっとあるはずだ。

入社3年目の三枝さんもまた、両親からプレゼントされた同社のウサギ一家を遊び仲間に育った少女のひとり。「アイテムや服をこつこつ集めて、この子はどんな性格で、どんな話をしてるのかなって、いつも空想していました」と、指先がちいさな人形を愛しげに撫でる。

そんな彼女が玩具業界をめざすきっかけになったのは、武蔵美時代の課題だった。与えられたテーマは“新しい遊びの創造”。三枝さんはアメーバのような不思議な形にマグネットをうめこんだ積み木をつくり、“インベーダーズ”と命名した。

この積み木には、組み立てるとこうなるという完成形があるわけではない。積んだりつなげたり、自由に楽しんでくれたら…という発想から生まれた作品だった。

「アイデアをまとめている時も、できたもので遊んでいても、ひたすら楽しくて。そうだ私はおもちゃが大好きだったって思い出したんです」。

そんなまっすぐな想いが通じ、三枝さんは卒業後、同社の門をくぐった。

武蔵美時代につくった積み木。
質感や色、カチカチとくっつく感触などにもこだわった、三枝さんの遊び心を具現化する作品になった。

優しくあたたかなシルバニアワールド
さらに魅力を深める担い手に

入社後の三枝さんは、まず営業やジグソーパズルの企画開発を担当し、作家探しや印刷会社への発注管理などをひととおり経験する。そして3年目の春に異動となったのが、現在の部署。発売30周年を迎える同社の看板商品であり、全世界で愛される『シルバニアファミリー』に関わる、憧れのチームだった。

「シルバニアファミリーの魅力は、愛らしい動物たちと、本格的なセットや凝った小物。想定ターゲットは女児ですが、大人も満足できる質感や造形へのこだわりで、世界中に熱心なファンやコレクターがいます。このブランド価値を守りながら、さらに豊かな世界観を創造するのが、ブランディング企画室の使命です」。

現在、三枝さんは、ファンクラブ会員向けのイベントの企画や販売店を彩るディスプレーのデザイン・設置、そして新たな製品が世に出るとき、その製品に同梱されるストーリーブックの監修などを担当している。

自身もはまったロングセラーの担い手として、多岐にわたる業務にチャレンジする日々は、「こんなに楽しくていいのかな」と思うくらい、充実しているようだ。

「長く愛されるおもちゃには、独自の世界観があると思うんです。シルバニアの場合は、美しい森・山・海・町で暮らす、楽しい仲間たち。バックヤードやキャラクター性がしっかりしているからこそ、そこでどんな物語が起こるんだろうと想像力を刺激されるんだろうなって」。

目下の夢は、自分の考えたミニストーリーが添えられた商品を、世に贈りだすこと。「受け取った人が、遊んでいた頃の楽しさを思い出して、幸せな気持ちになってくれたら…」というメッセージに、童心を忘れぬまま歩み続ける人らしい輝きが感じられた。

30年前の発売当時、9家族・11アイテムだったシリーズも、今では20家族・170アイテムに。世界観を表現した店舗には世界中からファンが訪れる。

上司が語るムサビの人間力

美大生らしい提案力

前 美里
シルバニア本部 ブランディング部
ブランディング企画室
マネージャー

新配属ということで、幅広い業務にチャレンジしてもらっていますが、どんなことにもハキハキと前向きな姿勢が魅力。平面のSPツールから立体ディスプレーのアイデアまで、美大生らしい遊び心とセンスが感じられる提案をしてくれます。社員・販売店はもちろん、語学力を生かして海外の取引先とも積極的にコミュニケーションしており、ブランド愛あふれる朗らかな対応で、周囲に愛される存在になっています。

企業リンク
> 株式会社エポック社