取材:2015年7月

勝山 翠(かつやま・みどり)
2011年、空間演出デザイン学科卒業。
入社後はマーケティングの部署で同社のカタログ制作などを担当。2013年、念願叶ってデザイングループに移籍。
CMFデザインチームの立ち上げから、同事業を支える主力メンバーとなる。


色・素材・仕上げのバリエーションが
プロダクトの魅力をさらに深める

「当社の製品は、結婚やリフォームといった人生の幸せなタイミングで買ってもらえるんだよと、入社前に人事の方がおっしゃっていて。その言葉が、とても響いたんです。生活の一部でありながら、節水技術などによって使うだけで自然に暮らしを豊かにしてくれるというのも、素敵だなあって」。現在、TOTO株式会社でデザイナーを務める勝山さんは、入社前に心動かされたエピソードを、そう振り返った。

日本の住宅設備のレベルは世界でもトップクラスだが、中でもTOTO製品は、節水・省エネ・消音といった機能性と使い勝手の良さで、高い評価を受けている。そんな同社で、彼女が担当しているのが“CMFデザイン”。プロダクトそのもののデザインではなく、製品の見た目を左右する色(Color)・素材(Material)・仕上げ(Finish)を考えるのがミッションだ。

「機能や価格に縛られて、限られた中から選ぶのではつまらないですよね。理想の住まいにはこんな爽やかなキッチンがいい。こんな浴室ならもっとくつろげそう…と、お客様のイメージを刺激する、多彩な選択肢をご提案したいんです。なにしろこういうものは一度買ったらそうそう買い換えられませんから」と、広げてくれたカタログには、驚くほど多彩な色や質感のパネル材が並んでいる。

システムキッチン『クラッソ』のパネルは、現在59種類。ビビッドなカラーリングに加え、木目・布目・刺繍モチーフなど、インテリア発想のデザインが人気を博している。
落ちついた木目に、艶やかなターコイズの差し色を。
自由な組み合わせによって、キッチン選びの楽しさはますます広がっていく。

デザイナーのアイデアが
ダイレクトに表現できる新技術を得て

リフォーム市場の活況もあり、かつては白地やパステルカラーが主流だった住宅設備のカラーリングには、いま大きな変化が起きている。ファッションのように、インテリアのように、好みの色やデザインを選びたいという消費者が増えているのだ。

そんなニーズに応えるべく、TOTOが昨年開発したのが『UVダイレクトファイン塗装』という技術だ。

「これまでのパネル材は、印刷会社から購入したシートを使用して生産していました。でもこの新技術を使うと、私たちがデザインした色柄を、自社工場でダイレクトにパネルに塗装することができるんです。

これまでは再現が難しかった細密なモチーフや微妙な色合いを、そのまま製品化できるというのは、デザイナーとしてやりがいを感じますね」。

一見、パステル系のマルチストライプ。しかしアップにすると、北欧の伝統的な刺繍モチーフ。繊細なデザインと美しい発色を実現できるのは、UVダイレクトファイン塗装だからこそ。

実は勝山さんが所属するCMFデザイングループは、この技術の開発と足並みを揃えて、2年前に立ち上げられた新たな部署。機能性だけでは差別化が難しい時代、ビジュアルで魅了するCMFデザインは、今後の業績にも大きく関わることになりそうだ。

「武蔵美時代に私は “作品の背景にある情報を大切にする”ということを学びました。作品を仕上げるまでに、自分がどんなことを考えたか、どんな工夫をしたか。この作品を、誰にどう届けたいのか。そういう形には表れない情報が伝わった時、意外なくらい人の心を動かすという経験ができたんです」。

ショールームに展示された美しいキッチンに、多くの人が足を止め、楽しげにパネルを見比べる。その姿を眺める勝山さんもまた、名も知らぬ誰かの背景に、どんな夢や希望があるのだろうと想像する。

入社から4年、自らのデザインを世に問うて、未来を見つめるまなざしはどこまでも意欲的だ。

上司が語るムサビの人間力

決して妥協せず、粘り強く

伊藤 智幸
デザイン本部 プロダクトデザイン部
CMFデザイングループ グループリーダー

『UVダイレクトファイン塗装』は、デザインを起こし、印刷し、製品化するまでの工程をすべて自社で行うかつてないプロジェクト。デザインの現場では、当然無数のトライ&エラーが現在進行形で起きています。彼女は第一弾の製品が完成するまで、連日デザインを考え、試作し、色校で精度を確認して、納得いくまで修正するという作業に、粘り強く立ち向かってくれました。チームを支える、若き第一人者だと感じています。

企業リンク
> TOTO株式会社