取材:2015年5月
藤原 瞳太(ふじはら・とうた)
2012年、芸術文化学科卒業。
大日本印刷株式会社入社3年目にして、同社の将来の事業の柱にと期待される「新規メディア開発・研究」を担当する現在の部署に抜擢される。また、同社事業部の駅伝チーム主将としてアマチュアレースでも活躍している。
ラジオリスナーの心を動かし
実売まで導く新たなマーケティング
大日本印刷株式会社(以下DNP)といえば、印刷業界では世界屈指の大手。近年では出版印刷に限らず、ITや文化事業など多彩なフィールドで事業を展開している。藤原さんがDNPを志望したのも、その幅広さに心惹かれたからだった。
「就職活動にあたっては、モノづくりに関わる仕事、なおかつ最初からジャンルを限定されない会社に決めていました。そうしたら、DNPの説明会で“うちは世の中のすべてに関わる企業です”という話を聞いて、ここだ! と」。
入社後、藤原さんがまず配属されたのは広告代理業務を行う部署。新聞・雑誌やWebなどの広告枠のバイイングを2年間担当し、ビジネスの基礎となる営業感覚を養った。
その経験を活かし、次に関わったのがDNPとTOKYO FMが共同で仕掛ける新たな販促戦略“AD+SPメディア”。ラジオ番組の内容と密接に連動したスマホアプリからクーポンを配信し、店頭での実売まで結びつけようというプロジェクトだ。
舞台となるのは、TOKYO FMの『Skyrocket Company』。番組=ラジオの中に存在する会社、リスナー=社員という設定で、アプリから番組内のゲームや企画に参加し、出世していくことができる。
「ラジオは元々、リスナーとのやりとりで番組が成熟していく双方向メディアの走り。最近ではスマホによる視聴が増え、ネットやSNSとの親和性も非常に高くなりました。ここにセールスプロモーションの視点を加え、番組オンエア→オンラインによるクーポン配信→オフラインでの購入という、新たな流れを作ったんです」。
どんなストーリーなら、リスナーが商品に興味を抱くか。実際に購入行動にまでつながるのは、どのクーポンか。さらには、どれだけの人を動かすことができたか。
リスナーとコミュニケーションしながら、セールスに直結させ、さらには成果測定も容易な注目の新サービスの企画には、リスナー層に近い藤原さんの若さと営業経験が大いに反映されている。
大学時代から持ち続けた視点が
現在、そして未来につながっていく
藤原さんは昨年、DNPの中でも極めてチャレンジングな存在である、メディア・ラボのメンバーになった。
情報や商品をつくる企業側ではなく、受け手となる“人間”起点で、研究者や学生など、さまざまな視点を持った人たちと協力しながら新たなメディアの研究開発に取り組む。そんな難プロジェクトに抜擢されたのは、武蔵美時代の卒業論文が評価されたからだという。
「僕は芸術文化学科で映像学を学び、卒業論文では“凝視”をテーマに、映像を知覚する現代人の感覚について研究しました。それを読んだ上司が、映像と人の感覚の関係性を探ろうという、まさに人文的な発想が、新たな事業開発に活かせるのではと声をかけてくれたんです」。大学時代の研究が、社会に出てからこんな風につながるなんてと、藤原さんはおもしろそうに微笑む。
「AD+SPメディアもそうですが、DNPは今、印刷会社という枠を超えたトータルメディアカンパニーへの道を模索している最中。これから僕らが生み出す新しいメディアがどんな形であろうとも、受け手の知覚や心を揺さぶらなければ、ビジネスにはなりえないということは肝に銘じているつもりです」。
そう語る横顔には、ビジネスマンであると同時に、研究者のような真摯な雰囲気が漂っていた。
上司が語るムサビの人間力
トリックスター的な発想に期待
宮川 尚
C&I事業部
メディア本部 MC事業開発室 室長
しごく淡々とした働きぶりにも関わらず、時折見せるトリックスター的な発想が、妙に気にかかる存在なんです。仕事中は寡黙なのですが、そのぶん口を開いた時には、テーマをじっくり考え抜いた、深みのある意見を出してくれるのが彼の魅力。DNPという可能性に満ちた会社で、武蔵美時代から養われてきた彼のユニークな発想や着眼が、この先どんな形に結実するのか。僕自身注目していますし、期待しています。
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