取材:2014年6月(2017年3月改訂)
古瀬 美帆(ふるせ・みほ)
2008年、油絵学科卒業。
主に『ソニック カラーズ』、『マリオ&ソニック』シリーズなどの背景デザインを担当。プロジェクト完了後の長期オフには、たまったゲームをやりこんだり、油絵を描いたりと、まさに“好きを仕事に”の生活を楽しんでいる。
油絵から3DCGの世界へ
未経験だからこそ、挑みたかった
古瀬さんにとって、ゲームは幼い頃からごく身近な存在だった。ファンタジックな世界を旅したり、派手なアクションでスカッとしたり。あくまで趣味として楽しんでいたゲーム業界で働いてみたいと思ったのは、卒業を前に、改めて“自分の希望”について考えた結果だった。
ゲーム業界でコンピューターグラフィックス(CG)のスキルが求められることは当然分かっていたが、武蔵美での4年間を油絵に没頭した古瀬さんにその経験はない。普通ならば、未経験では選考に通らないかも…と考えるところだろう。
「でも私の望みは、ずっと絵を描いていきたい、ということでした。だからそのツールが絵筆でもパソコンでも抵抗はなかったし、むしろ未知のジャンルに挑戦してみたかった。油絵で学んだことがCGの世界でも生かせるのではないかという予感もありました」と、古瀬さん。
油絵で培った画力に加え、ポジティブな人柄も評価され、入社したのは株式会社セガ。世界中にファンを持つ老舗ゲームメーカーで、希望どおり背景グラフィック担当として、家庭用ゲームの開発部門に配属された。
「幸いセガには人を育てる社風がしっかりとあり、新人でもアイテムのCG制作などをどんどんまかせてくれました。自分のつくったものが画面の中で動く喜びを早くから経験させてもらえたのは、本当に励みになりましたね」
経験の浅さを伸びしろに変えて、古瀬さんは3DCGのスキルをぐんぐん吸収していった。
“ゲームの世界観”を創る背景
一瞬のカットにも、情熱をこめて
入社から6年間に、古瀬さんが関わったソフトは6作。
「少ないと思うかもしれませんが、ゲーム開発というのはビッグプロジェクトなら数年がかり。プレイヤーの目に留まるかも分からない短いシーンに、何週間も費やすこともあります。正直、根気のいる仕事ですが、私は日々楽しんでいるなあと思います。なぜなら、大好きな絵を描いているから」
新たなプロジェクトが始まり、担当する背景やシーンが決まると、古瀬さんはまずラフを描く。やがて色鮮やかな3DCGとなり、いきいきと動きだす背景のスタートは、いつだって鉛筆描きのスケッチだ。自らの手で描くことで、古瀬さんはまだ誰も知らないゲームの世界観を掴む。
「今は家庭用ゲーム機のソフトの仕事がメインですが、セガは他にもアーケードゲームやスマートデバイス向けゲームなど、多彩な作品を開発しています。背景ひとつとっても、実写と見まごうリアルなものから、デフォルメされた愛らしいタッチまでさまざま。だからいずれは、どんなプロジェクトに加わっても、ふさわしい世界を描けるデザイナーになりたいですね」
セガの看板キャラクターである、超音速の青いハリネズミ。彼が一瞬で駆け抜けていく背景にも、古瀬さんのたゆみない絵への情熱がこめられている。
上司が語るムサビの人間力
任務を完結させる力
星野 一幸
コンシューマコンテンツ事業部 第2CSスタジオ
Sega of America, Inc. 出向
Director of Creative Services
武蔵美生は、画力やセンスという点ではすでに一定の担保がなされている人材だと、当社では捉えております。
その上で彼女が優れているのは、きっちりと完成させる責任感があること。時間や予算を意識し、その枠の中で、自らに託された仕事をどこまで高いクオリティにもっていけるかを常に考えている。プロジェクトの仲間達に愛される温和さの陰に、プロとしての芯の強さが伺えます。
企業リンク
> 株式会社セガゲームス