取材:2011年7月(2017年3月改訂)

三塚 篤(みつか・あつし)
2006年、空間演出デザイン学科、セノグラフィコース卒業。
大学3年時、フジテレビジョンが開催する「クリエイターズスクール」に参加し、映像制作者への道を選ぶ。
入社後はCGディレクターとして、『マルモのおきて』『フリーター、家を買う。』『脳内エステ IQサプリ』など人気ドラマやバラエティ番組のCG制作を手掛ける。


武蔵美で追いかけた理想が
プロとして生きる道標に

『LIVE MAJOR LEAGUE BASEBALL』の冒頭、フレームから飛び出さんばかりに暴れまわるキャラクターが、スーパースターの躍動を予感させる。入社2年目に手掛けたこの作品で、CGクリエイターとして生きる三塚さんの喜びと感性が弾けた。

「グラフィティアートが動き出したら面白い。実際に壁に絵を描けたら、もっと面白い。提案すればどんどんトライさせてもらえた。アイデアを形にしていくのが楽しくて、自分はこの世界でやっていける! そんな手応えを得ました。武蔵美で教わってきた“ゴールは明確に、プロセスは自由に、挑戦的に”という理想が、仕事の中で認められた瞬間ですね」

以来、CGディレクターへと着実にキャリアを重ねてきた三塚さん。映像の設計図と素材を完璧に用意して制作チームをリードする。可愛い子役のダンスで人気をさらったドラマ『マルモのおきて』のオープニング・エンディングも、彼の作品だ。

「年間20本以上の作品をまかされているので、求められるアイデアの量やスピードは想像以上。でも自分にしかないイメージを映像化できるのがディレクターの醍醐味です」

この道を選んで本当によかったと微笑む表情に、充実した日々と、プロとしてのプライドが垣間見える。

『マルモのおきて』の緻密な絵コンテ。
「可愛らしさを追求した」という映像イメージが、すでにはっきりと描かれていることがわかる。

新たな挑戦への意欲が
プレッシャーさえ楽しみに変える

主にテレビ番組のCGを手掛けてきた三塚さんのもとに、昨年突如、ハウステンボスのイルミネーションショーのディレクターという仕事が舞い込んだ。映像ではなく空間の演出、しかも三塚さんの年齢・キャリアとしては、規模も予算も異例の依頼だ。

「運がなければ巡り合えないプロジェクト」を前にして、怖さ以上に、新たな挑戦の予感が胸を躍らせたという。

通常、照明デザイナーが手掛ける光の演出は、1分間に多くて数十回程度の変化。しかしテレビの世界では1秒間に30コマという緻密さで映像をアレンジする。三塚さんは、このスピード感をイルミネーションにも持ち込んだ。

「僕が要求したのは、毎分約200回以上動きや色が変わる演出。ときには現場の皆さんと衝突もしましたが、とにかく自由にやらせてもらえました。またたく光に浮かび上がる観客の表情。音響と歓声が震わせる空気。ディスプレイの中では味わえないライブの反応は、CG制作の幅を広げるうえでも、大きな収穫になったと思います」

CGであれ空間演出であれ、常に斬新さを求められる三塚さんの職場。つきまとうプレッシャーを恐れることなく次の作品に挑む開拓精神が、彼を加速度的に成長させてきた原動力だ。

(写真左)ハウステンボス内の街並みを彩る『スリラー・ファンタジー・ミュージアム』(2010年)。
(写真右)工場跡の壁を借りて、自らの手で描いたグラフィティアート。『LIVE MAJOR LEAGUE BASEBALL』のオープニング(2007年)。
2013年12月から現在も展開しているフジテレビ55周年企画の社屋イルミネーション『GLITTER8』を総合演出として制作した。

上司が語るムサビの人間力

未来へつながるひたむきさ

大村 卓
クリエイティブ事業局
クリエイティブ事業開発センターCG事業部
CG事業部長(※2011年7月取材当時)

真面目でひたむき、というと普通過ぎるでしょうか。しかし、いつどんな仕事に恵まれるかわからない我々の世界では、常に手を抜かずに作品と向き合い続ける生真面目さが重要です。今はまだ日々の仕事で精一杯でも、これから吸収すべきこと、打ち破るべき殻はたくさんあります。彼の真摯さがあれば、チャンスが巡ってきたとき、必ずや大ヒットを飛ばして期待に応えてくれるでしょう。

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