取材:2011年5月

藤田 美佳(ふじた・みか)
2009年、視覚伝達デザイン学科卒業。
2010年に発売20周年を迎えた『キリン秋味』のパッケージリニューアルをマネジメント。『ブランドハイボール』、『にごり杏露酒』、『氷結』等のパッケージデザインを担当する。(※所属や役職は2011年5月取材当時)


商品の世界観を創り上げる現場に
深く関わる面白さ

美大を出て、誰もが知る飲料メーカーに入社。デザイングループに所属しているが、デザイナーではない。それが、入社2年目にしてロングセラービールのパッケージリニューアルを任せられた、藤田さんのスタンス。

「大まかなコンセプト、背景にある消費者データを読み込んで、商品のイメージや戦略を詰める。パッケージで表現したい世界観を、社外デザイナーとのやりとりの中で構築し、磨き上げる。最後は資材手配の部署や印刷会社とも頻繁に交渉しますね」

いわば、大局観を求められるプロデューサーであり、完成に至る細部の工程にまで関わる現場監督でもあるのだ。

こうした“全体を見る仕事”に興味を抱いたきっかけは、大学時代に経験したブランディングの授業だった。

「当時はクリエイター志望だったから、まず自分が作りたいものありき。カッコいい! オシャレ! だけで価値があると思っていた。

でも実際に消費者に広く受け入れられるものは、ターゲット、ニーズ、既存品の特徴などを分析した上で、あるべき姿に落とし込まれている。市場の理屈を学んではじめて、外に目を向けたモノづくりってこういうことか、と腑に落ちました」

自ら描くだけがデザインじゃない。商品を世に送り出す一連の流れに関わるのもまた、デザイン。熱いトークが、藤田さんの充実を物語る。

世界的ブランドの王道感か、ハイボールの親しみやすさか。熟考の末に完成した高級感重視のデザイン。
2011年にリニューアルした『氷結』スタンダード。フルーツと氷のシズル感を強調し、若年層にもアピール。

全方向にミーハーであれ
時代を先取る感性に磨きをかけて

パッケージは、消費者が直接触れ、購入動機に直結する広報ツールでもある。では、どんなデザインが人の心を捉えるのか? という問いに、「旬を先取りすること。人と時代が求めるものを、いち早く具現化してみせるのが大事」と答えた藤田さんは、雑誌やテレビ、流行の音楽、人気スポーツ選手などのチェックが大好きな、自称ミーハー。広角のアンテナが、時代の動きを敏感に察知する。

たとえば、リニューアルを手掛けた『キリン秋味』は、季節限定商品として20年の歴史を持つブランドだった。

「発売当時と今では、時代が違う。発泡酒などの普及で、ビールはよりプレミアム感の強い飲物になりました。しかも『秋味』は季節限定。固定ファンも多い商品なので、登場感、待望感を演出する華やかさを重視しました」

大胆なイメージチェンジや、なにもそこまでと驚かれるような、こだわりの仕様。藤田さんの提案の裏には、自らの直感を信じる強さがある。

「あくまでも根底にあるのはマーケティング。でも、これだ! という直感が働いたときは、データに縛られずに挑戦することも必要だと思っています。数字と感性どちらを選ぶかの見極めも私の仕事。こうしたせめぎあいの中から、新たな時代に必要とされる商品を送り出したい」

淀みなく言い切る藤田さんの瞳は、消費者を酔わせる次なる“旬”の行方を、鋭く見極めようとしていた。

フロスト加工瓶に特殊印刷、和紙ラベル。高価格商品らしい上質感にこだわりぬいた。
伝統工芸品のようにあでやかな『秋味』のパッケージ。この時期だけの美味しさを想起させる、豊饒な世界観が描き出された。

上司が語るムサビの人間力

チームを牽引する強い意思

今井 雅也
営業本部
マーケティング部 商品開発研究所
デザイングループ 主査(※所属や役職は2011年5月取材当時)

デザイナーやサプライヤーと対話しながらパッケージを作り込んでいく彼女の仕事は、コミュニケーション能力が鍵を握る。意図を説明し、ゴールに向かって周囲をリードする意思がなければできません。彼女は主張がはっきりしていて、若手ながら貫禄さえ感じさせます。デザイングループ自体もまだ若い組織。これからは彼女のような存在が、当社が目指す「麒麟美」の世界を磨き上げてくれるだろうと期待しています。

企業リンク
> キリンビール株式会社