進路や就職のことを考えるうえでぜひ利用してもらいたい、キャリアセンターの「個別進路相談」。進路の方向性が定まらない段階での相談から、エントリーシートの添削や面接練習などの具体的な就活対策まで、担当の職員と腰を据えて取り組むことができます。実際に個別進路相談を活用し就活を終えた油絵学科4年生の佃いつきさんと、佃さんを担当したキャリアチームリーダーの須藤周子さんに、相談の内容や学生と職員とのコミュニケーションについて聞きました。


——まずは個別進路相談がどのようなものなのかを教えてください。

須藤周子さん(以下、須藤):キャリアセンターの個別進路相談は、学生へのサポートのなかでも大きな軸となっているものです。キャリアチームの職員にはキャリアコンサルタントの資格を持つカウンセラーが複数名いるほか、業界ごとにそれぞれの採用事情をよく知る担当者がいます。それらの職員が、1回30分の枠で希望者に対して面談をするのが個別進路相談です。
以前は就活年次生に特化したものでしたが、現在は1、2年生でも、悩みごとが具体的になっていなくても、キャリアについて意識し始めたら誰でも相談できる体制になっています。

——担当の職員を選ぶことができるのでしょうか。

須藤:個別進路相談は就職支援システムの「ムサビ進路ナビ」から予約できますが、その際に、志望する業界の担当職員のいる日程を選ぶことができます。

——就活生はどれくらいの時期から利用しているのでしょうか。予約しやすい時期や利用者が多い時期はありますか?

須藤:例年、4年生の就活のピークは6月末くらいまでです。その少し前の6月後半くらいから、徐々に3年生の予約が入ってくるイメージですね。2〜6月の就活真っ只中の時期は予約の枠もすぐに埋まってしまいますが、授業がなくなる夏の間はなかなか予約が入りません。キャリアセンターはその期間も動いていますし、オンラインでの面談もできるので、夏をどう使うか、今できることはあるかなども、相談していただければと思います。低学年の利用はまだ少ないですが、少しずつ増えてきている印象です。

——佃さんはどれくらいの時期から利用していましたか?また、利用するきっかけがあったのでしょうか。

佃いつきさん(以下、佃):私は3年生の5月くらいに利用し始めました。不安になりやすい自分の性格を考え、ひとりで就活していると悩んで気持ちが病んでしまいそうなので、就活に詳しい大人の力を借りながら取り組もうと思ったんです。教員免許を取得する授業で4年生の5〜6月は教育実習に行くことがわかっていたので、その時期は時間を取られるという不安もすでに持っていました。
また、私の所属する版画専攻は人数が少なく、就活に対する力の入れ方もそれぞれで、就活のことをなかなか話題にしにくい環境だったということもあります。

——キャリアセンターに対しなんとなく敷居が高いと感じる学生もいるようですが、佃さんはいかがでしたか?

佃:最初にキャリアセンターに行ったときは、本当になにも調べずに、なんとなく気になる業界があるというくらいの状態で……。「怒られるんだろうな」と思っていましたが、そのときは職員の方に、「この業界がいいと思うなら、こういう調べ方をするといい」というようなアドバイスをいただきました。怒られるどころか、むしろ「話しやすいからまた行こう」という気持ちになり、行ってよかったなと思いました。

——1回30分という個別進路相談ですが、実際にどのようなことを相談していたのか教えてください。

佃:私はほとんどエントリーシートの添削だったので、前回指摘を受けたところを直して持っていくということを繰り返し、ブラッシュアップを手伝っていただきました。ただそれだけではなく、エントリーシートで落ちたときや不安なときに気持ちをざっくばらんに聞いてもらったり、予約が空いている時期には面談の時間を延長してもらったりと、柔軟に対応していただきました。

——エントリーシートの添削を受けてみてどうでしたか? 自分ひとりでつくり上げるものとは違うものができたと思いますか?

佃:はい。私は文章を書くのは好きですが、自分の言葉を就活に合わせたものに直すのがすごく苦手だったんです。エントリーシートでは、いかに説得力のある文章にするかが大事なので、自分の書いたものにコメントをいただきながら、聞き慣れない言葉ではなく、わかりやすい言葉で整えていきました。設問の数が30くらい設けられている企業もあり、多いところでは1カ月くらいかけて書き上げました。

——個別進路相談を利用する場合は、事前に相談内容を共有するのでしょうか?

須藤:一応ルールとして、エントリーシートは面談の前日までにデータで送ってもらうことになっています。予約がそんなに埋まっていない時期であればゆったりと時間を使えますが、2月くらいからは予約が混み合うので、事前に質問内容を整理しておくとより時間を有効に使えると思います。
キャリアセンター自体も個別進路相談も、繰り返し利用する学生もいれば、疑問点やポイントだけ聞きにきてそれ以降は自分で就活を進めるという学生もいて、さまざまです。どのような利用の仕方も大歓迎ですし、基本的には学生のみなさんが望むサポートをしたいと考えています。

——キャリアセンターとして、学生とのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。

須藤:就活でいくつもの企業を受けるなかで落ち続けていると、どうしても自己肯定感が下がってきてしまうことがあります。側から見ていると、それでも諦めないガッツや継続力や、美大生ならではのすばらしい資質を、それぞれの学生が持っているんです。でもそれを見失ってしまうこともある。そんなときに、みなさんに自分のすばらしさを思い出してもらえるような働きかけをしたいといつも思っています。実はそれくらいしか、キャリアセンターの職員ができることはないのかもしれません。就活というのは、学生のみなさんが自分で気づいて戦って切り拓いていくものなので、キャリアセンターの職員としての役割を大事にしながら進路の相談を受けています。

——佃さんは、キャリアセンターからのアドバイスで特に役に立ったことや、相談してよかったことはありますか?

佃:私は本当に悩みやすいタイプなので、面談で具体的な相談をするというよりも「どうしよう……」という状態によくなっていました。そういうときにキャリアセンターの方は、「こういうやり方の先輩もいた」とか、「こんな進路も考えられる」など、いろんな方向性を提示しながら聞いてくださって、すごく助かったと思っています。いくつかの選択肢のなかから自分の道を見つけてもいいし、その情報をもとに別の方向性を考えることもできるようになる。具体的な選択肢が見えてくることで、ただ悩みを吐き出すだけでなく、悩みながらも一歩ずつ進むことができました。本当にたくさんのムサビ生の就活を見てきた職員の方たちなので、根拠を持って背中を押してくださっていたと感じています。

——最後に、キャリアセンターの個別進路相談の利用を迷っている学生に向けてメッセージをお願いします。

佃:ひとりで悩んでいるとどうしたらいいかわからなくなるし、迷いながらも相談に行っていないことに対して落ち込んでしまったりすることもあるかもしれません。キャリアセンターは大学の一部なので、図書館と同じようにとりあえず気軽に行ってみて、自分の就活に合いそうだったら通い続ければいいと思います。

須藤:キャリアセンターには、学生のみなさんの力になれるのであれば、どんな些細なことでもしたいという職員ばかりです。得意な業界やタイプもさまざまな職員がたくさんいるので、途中で担当者を変えることもできますし、自分の求めるサポートに合う職員を見つけてもらえればと思います。佃さんの場合は、面談は私が担当していましたが、面接練習は別のスタッフを入れるなど、必要な緊張感を持って練習できるようにしましたね。

佃:内定先の面接練習は2回だけでしたが、前回からの変化やよくなった点を伝えて励ましてくださいました。いただいたアドバイスや指摘をメモしたり、ちゃんと取り組むというのはもちろん大前提ですが、どの職員の方も、がんばっている学生にはすごく丁寧に考えて対応してくださると思います。個別進路相談は自信にもつながるので、迷っているのであればぜひ行ってみてください。