キャリアセンターでは、年間を通してさまざまな進路支援のイベントやプログラムを行っています。ラインナップや4年間の流れ、1・2年生のうちに参加しておきたいものなどについて、キャリアセンターの奥村志保さんと舘野可奈さんに聞きました。
——キャリアセンターのイベントやプログラムは4年間を通してどのようなものがラインナップされているのか、大きな流れを教えてください。
奥村志保さん(以下、奥村):まず1・2年生向けには、卒業生が社会でどのように活躍しているのかを紹介しつつ、美大の進路には企業就職だけではなく、広い選択肢があることを知ってもらうイベントを用意しています。
3年生になると、ガイダンスや個別面談を通じてそれぞれの進路に向かう準備を進めていきます。1・2年生は全体、3年からは個人向けになっていき、卒業まで進路をフォローするというのがおおまかな流れです。
——最初に参加するものとしては、どんなものがあるのでしょうか?
奥村:入学後の新入生オリエンテーション内で行っている「進路・就活ガイダンス」が、最初に進路に触れる機会になると思います。ただし、今年度からはそれとは別に、後期に1・2年生向けのガイダンスを開こうと計画しています。3年生になってから焦らないよう、『武蔵野美術大学 キャリアガイドブック(1・2年生向け)』をもとに、4年間のスケジュールや低学年のうちからやっておくべきことをお伝えできたらと考えています。
——おすすめの低学年向けのプログラムはありますか?
舘野可奈さん(以下、舘野):まず「キャリア設計基礎」でしょうか。こちらは授業科目であり、1・2年生が受講できるものです。定員は1回につき約100名で、前期に2回、後期に2回開講されるので、年間で合計約400名が受講できます。毎回ほぼ満員になりますね。社会人マナーのような、社会に出るにあたって覚えておきたい知識を学べるほか、卒業生のお話を聞く回もあります。20代後半から30代くらいの、学生と年齢が近く、身近に感じられる方を招き、幼少期から学生時代、そして今の仕事と未来の展望まで、教授と掛け合いながらお話ししてもらう形です。
奥村:もうひとつおすすめなのは、全学年が受講できる「作家・クリエイターズ支援プログラム」という講座です。作家やフリーランスとして活動している、あるいは起業した卒業生を招き、これまでのキャリアや人脈の広げ方、作品の値付けについてなど、個人で活動するうえで役立つお話を聞くことができます。企業就職以外の生き方を想像できる、ムサビならではのプログラムです。
——リアルなお話から、具体的なキャリアのイメージが広がりそうですね。ほかに、ポートフォリオの作成支援も行っていると聞きました。
舘野:企業就職を目指す場合、学科や専攻によっては、作品をつくっているだけではどうしても就職活動に結びつきにくいところがあります。デザイナーや美術製作職に興味がある人は、多くの企業の就職試験で提出が求められるポートフォリオの準備を、なるべく早くから進めておく必要があります。
全学年が対象の「ポートフォリオ作成支援プログラム」は、ポートフォリオの基礎知識から準備、作成まで実践的に学ぶことができる全6回(2023年度)の連続講座。3年生からポートフォリオづくりを始めようとすると時間的に間に合わないこともあるので、1・2年生のうちから受講することをおすすめします。
奥村:本格的に進路決定に動く3・4年生には、面接やSPIなどの「就活対策講座」、個別の進路相談、面接対策などを用意していますが、なかでも「合同会社説明会・会社説明会」は毎年多くの有名企業に参加いただいています。1社ごとの会社説明会は年間100社以上、合同会社説明会は年間200社以上。人事担当者や卒業生が来校しお話を聞くことができます。
2022年度 会社説明会実施一覧(抜粋)
◾️ゲーム
スクウェア・エニックス/コナミグループ/バンダイナムコスタジオ/コーエーテクモホールディングス/セガ/カプコン/Cygames/ポケモン/コロプラ/1-UPスタジオ/ゲームフリーク
◾️メーカー(機械・食品・化粧品・文具・雑貨等)
ソニーグループ/富士フイルム/東芝/NEC/シャープ/リコー/コニカミノルタ/三菱電機/島津製作所/富士通ゼネラル/花王/資生堂クリエイティブ/日産自動車/クボタ/デンソー/マツダ/コクヨ/パイロットコーポレーション/シマノ/河淳/サンエックス/タカラトミー
◾️広告・印刷・出版・IT・コンサルタント
電通/博報堂/東急エージェンシー/ブラビス・インターナショナル/たきコーポレーション/大日本印刷/凸版印刷/レンゴー/共同通信社/サイバーエージェント/アクセンチュア/ZOZO/コンセント/Sun Asterisk
◾️空間・ディスプレイ・建築・インテリア・放送・番組制作
大成建設/積水ハウス/日本設計/東洋建設/オカムラ/ムラヤマ/バウハウス丸栄/ジーク/オリバー/TOTO/東リ/日本テレビアート/テレビ朝日クリエイト/Мテック/シミズオクト
——低学年向けのプログラムを企画するうえで、どのようなことを大切にしていますか?
奥村:低学年のうちは、就職活動を意識させすぎないことを大切にしています。というのも、大学生活でなければできないことをたくさん経験してほしいと思っていて。なにかをするうえで、まだ就活が目的にはなってほしくないので、とにかく日々を楽しんでほしいです。
低学年のうちからキャリアセンターに足を運ぶ学生には「就活が心配で心配でたまらないから、とりあえず来てみた」という人も多いのですが、そういう人にはまず「大丈夫だよ」と伝えています。授業や課題にしっかり取り組み、アルバイトやサークル、課外活動など、いろいろな経験をして視野を広げ、そこから自分の好きなことやできることを考えていってもらえたらいいですね。
——「キャリアセンターのイベントは敷居が高い」、そう考えている学生にとって参加しやすいイベントはありますか?
舘野:内定者報告会と似たような位置付けで、「ジョブトーク」というものがあります。キャリアセンターに対して、堅い、入りづらいと思っている学生も参加しやすいイベントをつくりたいという想いから学生が始めたイベントで、キャリアセンターではなく進路が決まった4年生が主催しています。
内容は、「就活を終えた4年生が、後輩に伝えたい就活のあれこれを思いのままに語るトーク企画」。2022年度は9月から3月までに6回開催されました。会場では学生たちがワイワイ楽しそうに話していて、気軽に立ち寄れるようなとてもいい雰囲気。3回目くらいまでは、ポートフォリオにまつわる体験談など、全体に向けた内容が多かったのですが、年が明けて1・2月に開催したときは3年生がエントリーする時期に入っていたので、個別相談も行っていました。
奥村:企業就職に限らず、進路選択でうまくいっている学生は、キャリアセンターのイベントをはじめ、やはりいろいろな活動に参加している人が多い印象です。授業以外に、課外活動、アルバイト、産学連携プロジェクト、サークル活動など、多様な刺激を受けている人ほど、自分のことを分析できていたり、世の中のことが見えていたりするのかもしれません。そういう多様な刺激やチャンスを積極的にキャッチアップすることが、総合的な人間形成につながっていくのだと思います。
今年度は多くのイベントがオンライン開催から対面開催に戻り、参加率も上がってきました。そうした場に自ら足を運ぶことが、進路の選択に向けて主体的に進むためのきっかけになると思うので、ぜひいろいろな学生に参加してもらいたいですね。