美大生の就活に欠かせない「ポートフォリオ」。キャリアセンターでは株式会社ビビビットとともに、「ムサビ生のためのポートフォリオ作成支援プログラム」を実施しています。そもそもポートフォリオは美大生の就活でどのような役割を持つのか、なぜ必要なのか。また内容のポイントや、1、2年生のころにするべきことはあるのかなど、ポートフォリオの基本的な考え方を、ビビビットの井上佳子さんとキャリアセンターの舘野可奈さんに聞きました。


——まずは株式会社ビビビットのサービスについて教えてください。

井上佳子さん(以下、井上):「ViViViT」という、オンラインポートフォリオを介したクリエイターと仕事のマッチングサービスを提供しています。ムサビの学生や卒業生には、とても多くの方に登録していただいています。作品データを1点でも投稿すると自分のポートフォリオサイトがつくれるので、本格的にポートフォリオを作成する前に、データのバックアップ場所やとりあえずの作品置き場としても活用することができます。
また企業側のポートフォリオも公開しているので、業界研究や企業探し、クリエイターと企業とのマッチングもできるプラットフォームになっています。マッチングが増えてくる3年生の秋〜冬くらいまでは、作品やレポートを整理して一覧化するだけでも、自分のこれまでを客観視できるので便利だと思います。

——美大生の就活において、ポートフォリオはどのような役割を持つのでしょうか? また、どの業界を受けるとしてもポートフォリオは必要でしょうか?

井上:ポートフォリオには、就活生のデザインスキルと考え方をプレゼンする資料としての役割があると思います。デザイナー職を採用する企業は、学生に対してデザインスキルのほかに人となりやポテンシャルを見たい。その判断材料として、制作物をまとめたポートフォリオが求められるのです。

舘野可奈さん(以下、舘野):基本的にはほとんどの場合、ポートフォリオは必要になると考えていいと思います。たとえば、映像系の職種ではポートフォリオの映像版のような、作品を2分くらいのダイジェスト映像にまとめた「デモリール」と呼ばれるものが使用されることもあります。自分の予告映像のようなイメージですね。

——一般的なポートフォリオの内容や構成を教えてください。

井上:ポートフォリオはあくまでも就職のために企業に提出するもので、純粋に作品を見せるための「作品集」ではありません。構成としては、表紙があって最初に自己紹介が入り、そのあとにメインの作品、サブの作品というように、優先順位をつけるのが一般的です。自分の強みを説明できる作品や、提出する企業が求めるスキルを見せられる作品が優先度が高いものですね。たとえばゲーム会社であれば、ゲーム系の作品を前半に持ってくるなどです。

——複数の業種や職種を受ける場合は、それぞれポートフォリオの構成を変えて提出することもありますか?

舘野:そうですね、必須だと思います。希望する業種や職種とあまりに違うものを提出しても、採用担当の方もどう判断していいのかわからない。たとえば広告代理店だったら、ひと目で“刺さる”ビジュアルを自分でディレクションできることを示せる作品をメインに持ってきたり、メーカー系の場合は制作プロセスが重視されることもあるので、しっかりとわかりやすく情報を可視化・説明できる構成にするというイメージです。

井上:企業の方はポートフォリオを1ページ目から見ていくので、自社に関係のありそうな作品が中盤や後半にあっても印象が弱いかもしれません。多くの場合、最初のほうに載っている作品が、その学生の一番やりたいことだと思われるでしょう。

——ページ数など、全体のボリュームの目安はありますか?

井上:業界にもよりますが、最終的にできあがったポートフォリオを拝見すると、40〜50ページくらいが平均的でしょうか。企業によってはページ数や作品数の指定がある場合もあります。メインの作品は「巻頭特集」のようにそれぞれ数ページにわたって紹介し、サブの作品は1ページにまとめるなど、雑誌の構成を参考にするとわかりやすいと思います。

——ポートフォリオ作成にはいつ頃から着手すればよいでしょうか。

井上:ポートフォリオの体裁に慣れるという意味でも、早めに着手するのがおすすめです。志望業界や職種が決まっているのであれば、ポートフォリオも効率的に仕上げることができるので、まずは一度まとめて誰かに見せてみることをおすすめします。一方で、希望の進路が明確になっていない場合でも、つくってみることによって自分の傾向や特徴がわかり、進路を見出だす材料やきっかけになったりします。1、2年生であれば夏休みにこれまでの作品をふりかえるつもりで一度つくってみる。それくらいハードルを低く捉え、ポートフォリオについて考えるということを始めてみるといいと思います。

舘野:3、4年生になってから始めようとすると、いざつくるときに載せる素材がないことに気づくというケースもありますね。制作のプロセスや展示の風景など、そのとき写真に撮るなどして残しておかないと再現できないものもあります。いずれ必要になるかもしれないことを頭に入れておき、早くからしっかり記録しておくということも、準備としては大事なことだと思います。

井上:また、地味な作業ですが、データの整理も大切です。過去のことを思い出したりデータを探し出す作業は意外と大変なので、1、2年生のうちから整理しておくと、ポートフォリオをつくる作業もスムーズに進むのではないでしょうか。それから、美大生は本当にたくさんのデータを扱うので、バックアップも重要です。1年生の頃に使っていたパソコンが大事なときに壊れてデータが飛んだ……という話も聞くので、オンラインストレージでのバックアップをおすすめしています。

——ポートフォリオに対する最近の学生の傾向や変化はありますか?

舘野:以前は、学生にとってポートフォリオというのは「キャリアセンターに所蔵されているもの」でした。それが近年はViViViTのようなオンラインポートフォリオのサービスが生まれ、お手本となる全国の先輩たちのポートフォリオが見られるようになりました。学生がキャリアセンターに持ってくるポートフォリオも、わりとできあがった状態であることが多くなっているので、情報がオープンソース化してきた効果は大きいと思います。相談の内容も、以前は「なにから手をつけたらいいのか」、「学科でつくった作品はどの業界に通用するのか」というパターンが多かったのですが、最近は自主制作の作品を入れて構成してくる学生もいるので、具体的なアドバイスができることが増えてきたと思います。

井上:ここ最近では選考自体がオンライン化していることにより、ポートフォリオの形式も変わってきています。ViViViTのオンラインポートフォリオサービスは2013年に始まりましたが、やはりコロナ禍以降、需要がかなり増えました。とはいえ、紙のポートフォリオがなくなったということではなく、併用している方が多い印象です。デジタル媒体のIT系やモバイルゲームの企業などでは、完全にオンラインポートフォリオのみの場合もありますが、パッケージデザインや印刷業界などでは、紙のポートフォリオがまだまだ必要とされています。

——「ムサビ生のためのポートフォリオ作成支援プログラム」ではどういったことが学べるのでしょうか。

舘野:2021年度に始まったプログラムで、年間6回の講座でポートフォリオの基本を学びます。3年生をメインターゲットにしていますが、1、2年生も受講でき、学科・学年を問わないのも大きな特徴です。今年度は基本的な内容のほかに、それぞれの業界や職種に求められるポートフォリオのポイントがわかるようにしました。夏休み期間には、自分の気になる業界の企業からの宿題に取り組みます。普段の授業ではつくれないような課題を企業から宿題として出してもらい、コンテストのようなことをやろうと考えています。

井上:私も講座を担当していますが、その際はとにかくたくさんの事例を見せながら話すようにしています。ViViViTに集約された採用する側の企業の意見と、過去に内定を得た先輩たちのポートフォリオや情報から、学生が具体的に想像しやすくなるように心がけています。また、ポートフォリオに載せるテキストのアドバイスやプレゼン講座などもあり、今年はより実践的で深掘りした内容になっています。

——プログラムを通してポートフォリオづくりに取り組むことで、就活に向けてのモチベーションアップにもなりそうですね。

井上:以前、ムサビの卒業生がポートフォリオのことを「心強いパートナー」と表現していて、その言葉がとても印象的でした。まさにその通りで、最終選考で緊張していてもポートフォリオが自分の代わりに語ってくれるような、本当に心強い味方になると思うので、敬遠するのではなくぜひ前向きな気持ちで考え始めてみてほしいです。最初はハードルが高いかもしれませんが、走りながら考えるということも大切です。また、ムサビのキャリアセンターは支援がとても充実しているので、キャリアセンターにたくさん頼るといいと思います。

舘野:キャリアセンターには業界ごとの採用の評価ポイントなど、就活のための蓄積された情報があり、業界担当のスタッフがそれぞれの業界の視点で学生のポートフォリオづくりにアドバイスしています。ポートフォリオは人に見てもらうことが大事で、業界ごとの視点や経験のあるスタッフに見せることでブラッシュアップされていきます。ムサビにはそれができる環境があるので、少しでもまとまってきたら、自己完結せずにキャリアセンターに見せにきてほしいですね。


ポートフォリオ×しごとマッチングプラットフォーム「ViViViT」
https://www.vivivit.com/