キャリアセンターでは、ムサビ生に卒業後のキャリアを考えてもらうために、時流に合わせたさまざまなイベントや情報提供を行っています。2025年6月11日(水)には、大手メーカー企業のデザイナーやコピーライターを招いた座談会を初めて開催。今回は座談会を企画したキャリアセンターの鳥巣晶寛さんに、企画のきっかけや就活におけるムサビの強み、また鳥巣さん自身の経験も交えたキャリアの考え方について聞きました。
――キャリアセンターでは「1、2年生のうちからキャリアについて考えてほしい」という思いがあるとうかがいましたが、それはどうしてでしょうか。
鳥巣晶寛さん(以下、鳥巣):1、2年生で就活なんて早すぎると思うかもしれませんが、就活ないしキャリアについて考えることにフライングはありません。この時期に自己理解を深めるために、自分でアクションを起こして、新しい情報を得ていくことが大切だと考えています。
たとえばいま、ムサビ生にはゲームやアニメ業界がすごく人気です。好きなものを仕事にしたいという学生が多いんですね。でも、ユーザーの視点とつくり手の視点は違うように、好きなことが仕事として自分に向いているのかというのはまた少し違います。そこに対して自分自身に「揺さぶり」をかけながら、進路選択をしていく。キャリアは、自身への揺さぶりと情報収集の繰り返しで育てていくものだと思っています。だからキャリアをグラデーションとして連続的に捉え、就活を3年生になってから始めるものと決めつけないでほしいんです。
――「揺さぶり」とはどういうことか、くわしく教えてください。
鳥巣:言い換えれば「自分に問い直す」ということですね。そもそも、進路というのは狭めるものではなく、まずは拡げるものだと考えています。自身の可能性をまずは広く考えていくことが必要なんです。
もちろん、ムサビ生のなかには最初から「自分はこれ」と決め打ちできる人も多いとは思うのですが、全員が全員ではありません。「本当にやりたいことなのか」「自分らしさを発揮できるか」と自分に問いを立てながら、1、2年生を過ごしてほしいと思っています。
――ところで鳥巣さんは転職されて、2024年10月からムサビの職員になったとうかがいました。そうしたキャリア観は自身の経験もあってのことでしょうか?
鳥巣:そうですね。前職は教育関係の企業で、高校に対して模試やデジタル教材の提案を行う仕事をしていました。当時から「進路は狭めるものではなく、拡げるもの」という目線での提案を行っていて、それは大学生が対象でも変わりません。キャリアセンターとしても、学生が幅広く情報を集めながら、自身の可能性に向き合うサポートを充実させていきたいと考えています。
――ムサビ生のキャリア形成に関して、強みだと感じた部分と課題だと感じた部分を教えてください。
鳥巣:ムサビ生の強みのひとつとして、自らの価値観に正直であり続けられる点が挙げられます。そもそも、高校生のときに美大に進学するという決断、好きだと信じた道に進むことを経験しているのは大きいのではないでしょうか。全員ができるわけではない「第一歩を踏み出す勇気」を持っている人を応援することに意義を感じています。
一方で、伸びしろがあると感じる学生も多いと思います。こだわりすぎず少し視野を広げてほしいというか、情報をシャットダウンしないでほしいというか。たとえばフリーランス志望だったとしても、企業や社会の仕組みは知っておいたほうがいい。だから、情報収集のアンテナを立てて、幅広い業界や職種について積極的にインプットしてほしいです。

――6月に実施する大手メーカーの座談会も、情報収集のための機会になりそうですね。
鳥巣:そうですね。今回の座談会で登壇していただくのは花王、キヤノン、本田技術研究所のコピーライター、CGデザイナー、UI/UXデザイナーです。ムサビ生にとってメーカーはプロダクトのイメージが強いようですが、プロダクト以外にも幅広い仕事ができるんだというところをまず知ってもらいたくて企画しました。
低学年のうちからこうした情報に触れて、志望の揺さぶりをかけ、就活の軸をつくっていく支援をしたいと考えています。
――説明会ではなく座談会という形なんですね。
鳥巣:座談会形式だと、会社の異なる登壇者同士が会話するシーンも生まれると思います。そうすると、自社の強みや、他社のうらやましいところもより見えてくるはず。学生たちには、そういった客観的な視点の話も聞いてほしかったので座談会という形にこだわりました。
また、この形式は企業にとっても、他社志望の学生にアピールできるというメリットがあります。「A社志望でA社の話を聞きに来たけれど、B社のデザイナーさんの話もおもしろかったな。B社のエントリーもしてみようか」というふうに企業がムサビ生との接点数を増やすことができ、企業にも学生にもメリットがある企画になっています。
――これほどの大手企業が一堂に会するのは貴重な機会ですよね。
鳥巣:ムサビだからこそ実現できることだと思います。ムサビの卒業生は非常に多方面で活躍しているので、ありがたいことに企業からの信頼も厚いんですよね。また、卒業生の多くが「ムサビに来てよかった」「ムサビに協力したい」と思ってくれている。だから、こうした座談会を企画できました。
登壇者が手がけた商品の実物を前に、制作のプロセスや思考のプロセスを話していただくというライブ感を大切にするために、対面形式で実施することにもこだわっています。
――今後、ムサビ生にキャリアセンターをどのように活用してほしいですか?
鳥巣:まずはキャリアセンターのイベントに足を運んでほしいです。情報の変化が激しい時代ですから、キャリアセンターも過去と同じことをやるのではなく、常にブラッシュアップした企画を心がけています。また、対面でポートフォリオを添削する場や、卒業生と知り合う機会を多く設け、最新の情報を手に入れられるようにしています。
また、イベント以外の情報収集でも活用してほしいですね。たとえば、ムサビのキャリアセンター職員は業界別に担当を分担しており、各分野に特化した情報を「ムサビ進路ナビ」から発信しています。さらに、キャリア面談では志望業界に応じたポートフォリオやエントリーシートの添削、面接対策をその学生に合わせて行っているのでぜひ活用してほしいです。ムサビは日本で一番就職支援が手厚い美大だと自負していますから。
そして、社会人として歩み始めた卒業生のみなさんが、後輩のために母校へ経験を語りに来てくれる。そんな温かい循環が続くことを願っています。これからもキャリアセンターはムサビへの求心力を強めるハブとして、ムサビ生と社会をつなぐターミナルでありたいです。
(取材日:2025年5月15日)
【特別企画】-座談会で深める業界理解- 全ムサビ生に伝えたい!メーカーだからできること
就活における業界理解を深めてもらうことを目的としたイベント。職種の幅広さやキャリアパスなど、学生に大手メーカー企業だからこそできることを学ぶ場を提供し、キャリア支援の充実を図ります。
〇日時:2025年6月11日(水)17:00~18:30
〇会場:武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス
〇詳細は「ムサビ進路ナビ」の「ガイダンスに参加する」からご確認ください。(在学生のみ)